ゾンビになっても君を守ります

鳩胸ぽっぽ

プロローグ ①

 朝起きると世界が終わっていた。

 外を見ると、腐った死体のような人間が歩いている。野良犬を襲い噛むと野良犬も死体のような見た目に変化し、歩き始めた。


「あれなに……?」

「わからん……。なんだあれ」

「まるでゾンビ映画に出てくるゾンビのような……」

「つーか、そのゾンビってやつじゃねえの」


 隣にいる久保田 汐里は窓の外を見て怖がっていた。

 無理もねえ。見た目が見た目だしな……。


「助けてくれ! 誰か! 誰か生き残ってるやつはいないのか!」


 と、二件向かいの家からゾンビに追われながら出てきた男の人が叫んでいた。

 徘徊していたゾンビたちは一気にそっちの方を向いて、ゾロゾロとその男のところに群がっていく。ゾンビの大群に押し流され、ゾンビがいなくなった頃にはその男がゾンビになっていた。


「あの人もゾンビに……! ね、ねぇ朝陽! 逃げようよ!」

「逃げるったってどこにだよ」

「と、とにかく遠くに! 安全な場所あるかもしれないし……」

「つっても、この中で動くのは相当リスキーだぜ。さっきの見てたろ。家を出た男がゾンビになった奴。まだここに籠城してるほうが安全だぜ……」


 正直言うとああいう危険をあまり犯したくはない。

 死にたくないから。外に出る=危険という図式が成り立ってる今、外に出るなんていうのはほぼ自殺行為じゃねえか……?


「でもだよ! 籠城してどうするの!? 来るかもわからない助けを待つの!?」

「…………」

「食料だってなくなるんだよ!? 助けが来なかったらゾンビどころか餓死するよ!」

「わかってる……」


 籠城するにしても食料問題があるんだよなぁ。

 汐里は焦ったように逃げようと促してくる。あたしとしては反対なんだ。

 けど……。あたしが拒否すると一人で行きそうだ。汐里はそういうやつだ。ならもう抵抗しても仕方がない。


「とりあえず、武器になりそうなものを持って逃げよう!」

「わ、わかった! でも武器になりそうなものなんて一般家庭には……」

「キッチンに包丁があるでしょ! ないよりマシ……」


 と言いかけた時だった。

 下の方から何か激しい音が聞こえた。まるで扉を破ったかのような音だった。

 もしかしなくても入ってきたんじゃなかろうか。


「入ってきちゃった……?」

「チッ……窓から飛び降りろ!」

「こ、怖い……」

「怪我したらあたしが運んでやっから! いいからいくぞ! 死ぬよりマシだ!」


 あたしは2階の汐里の部屋から飛び降りた。

 汐里もあたしに続いて飛び降りる。そして、すぐに走り出したのだった。

 汐里は自分のチャリを取り出しチャリを漕ぐ。あたしは走り。ゾンビたちが追いかけてきていた。


「チッ……あたしより速くねえけど体力持つか……?」

「自転車と並走できてる朝陽って相当おかしいよ……?」

「これでも全力だよ!」

「私も全力で漕いでこの速さなんだけど!?」


 ゾンビたちを振り切り、ゾンビがいない場所までやってきた。

 あたしは息を整える。ぜーぜー、と本当に疲れた。


「と、とりあえずっ……。どこにいく? 生き残ってる人間はいるだろうけどよ……。どこにいるかはわかんねえんだろ?」

「そうだね……。と、とりあえず色々ある私たちの高校に行こうよ! 木刀とかあるし!」

「んだな。まずは武器が欲しい……」


 あたしらはとりあえずあたしらが通う里紅葉高校に向かうことにした。

 近くにある高校で、剣道部の部室には木刀があったり、野球部の部室には金属バットがあったりと武器になるものがある。リーチが少しでもある武器が欲しい。


 幸い、走ってきた方面が高校に向かう方向だった。あとは一直線に進むのみ。というか目の前に見えてるしな。


 あたしらは高校に近寄ってみると、校門が閉ざされ校門にはゾンビが群がっていた。


「校門が閉まってるっつーことは誰かいるんじゃねえか?」

「かも! でもどうやって入る?」

「登ることを考えないゾンビと違ってあたしらは人間だぜ? 塀を登るぞ」

「で、出来るかな……」

「私が補助してやる。とにかくゾンビがいない裏に回って塀を登るぞ」


 あたしらはぐるっと回って裏に回る。

 あたしは汐里を押し上げて学校の敷地内に入れ、あたしもジャンプし塀の上に飛び乗った。

 そして、グラウンドを走り玄関の方に向かうが……。


「机と椅子でバリケードが……。やっぱ生きてる人間いるよ!」

「でもこれじゃあたしら入れないぜ」

「違う出口ないかな……。あ、トイレの窓なら入れるんじゃない? あそこは窓も人一人分くらいだし高いから入ろうとする人はあまりいないだろうし……」

「そこだな。鍵かかってたらしゃあねえけど」


 一階の体育館近くのトイレに向かう。

 窓の位置はあたしの身長の2倍くらいある位置にある。汐里を肩車し、汐里が窓を確認すると。


「やっぱ開いてる! いっつもここ締め忘れてるからねぇ」

「よし、とりあえず入れ」

「うん」


 汐里を中に入らせた。

 あたしも壁をなんとかよじ登り中へと入る。そして、トイレを出た時、かいちゅうでんとうで照らされた。


「お、お前たちどこから……!」

「お、佐藤先生。ちっす」

「あー、生きてる人間だぁ……」

「避難してきてなかっただろお前ら!? どこにいた!? どこから入った!?」

「そりゃトイレの窓から。あたしらは噛まれてないっすよ。生身の人間っす」

「それは何よりだが……まぁいい! とりあえず体育館にいけ! 避難してきた人たちはそこにいる」

「うっす……」


 あたしらはとりあえず体育館の方に向かって行ったのだった。

 







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