社畜 休みの日を手に入れる

それから2週間連勤で働く

期間の迫る仕事を全て終わらせる

休みを得るには上司に申請しないと行けない、そして上司の許可がないと得られない

普段ならまず許可は降りないが月一で上の人が来るそのタイミングなら違う

何やらこの会社では数年前に事件があったらしくその時から上の人が来ている

特に何かをする訳でもなくただ様子を見に来ている

そしてその日に来る事は分かってもいつ来るか分からないという仕組み、そして何度寄るかも分からない

その日は例えその場に居なくとも上司は良い上司を演じないと行けない

その日であれば有給を差し込める

月一のチャンス、その好機は逃せない

(今回は2日取ろうかな。ダンジョンもあるし)

虎視眈々とその日を待つ


「有給絶対取る、まず仕事終える」


前日のうちにそれまでの仕事を終えておく

上司も一筋縄では行かない、前日のうちに仕事を押し付けてくる

決行の日は上司自身も仕事をやらないといけないので押し付けられない

その日だけは自分がやる範囲の仕事だけでいいのだ


「明日上司が来るんだ」

「そうなんですね」

「私が渡した案件要約した物を作っておいてくれないか」

「ありますよ」


上司が本来担当していた仕事の内容を要約した資料を手渡す

上の人から案件について質問攻めされるパターンもあり前日に来るのはいつもの事である


「仕事が早いね」

「いつもの事なので」


いつも通り仕事をしながら会話をする

この上司目を見て話せなどは言わない

会話に集中して遅れるくらいなら仕事しながら捌けと無理な注文をしてくるタイプ

蓮二は毎日それをこなしている


「それで君有給取る気だろ?」

「えぇ」

「何日間取る予定だ?」

「用事があるので連続2日で」

「泊まりかい?」

「いえ、用事自体は一日で終わりますが疲れる内容で」

「成程成程、今日中に日付を書いて提出したまえ。許可しよう」


(何か考えているな。なんだ?)

受け取りササッと記入して渡す


「その日か分かった。明日なのだが」

「はい」

「会議があるんだが手伝ってくれないか?」

「会議ですか? いつもの井上君は?」

「井上君は前の会議でヘマをしてね……」


(あちゃ……)

仕事を押し付けてくる系同僚の井上君、会議でも何でも基本上司について行くので付いた異名は上司の腰巾着


「あぁ成程……まぁ大丈夫ですよ」


上司の会議の手伝いなどと言っても腰巾着君が出来る程度の仕事、いつもの押し付けよりは何倍も楽な作業


「それは良かった」


会議の内容の書かれた資料を渡される

内容を見る

(これ前に渡された案件か……成程)


「これなら頭に入ってます」

「なら良かった」

「何が良かったのかね」


上司は身を震わせる

蓮二は声に聞き覚えがない

声の主の方を向くと強面の顔立ちに威圧感のある雰囲気が漂う

(こ、怖っ!?)

雰囲気だけなら魔物に匹敵する


「君は蓮二君か」

「は、はい! 井坂蓮二です」

「来るのは明日のはずでは……それにいつもは来ないのに珍しいですね」

「うん? あぁその予定だったのだが明日は会議があるのでな。少し話もあってな」

「そ、そうですか」

「今回は君が担当か」

「はい、そうです」

「質問いいかい?」

「な、なんですか?」


上の人、下手なことを言えば首が飛ぶ恐れがある

蓮二は緊張する

上司は今にも気絶しそうなほど緊張している

そこから上司と蓮二は質問攻めをされる

内容は会議に使う案件の話、上司はともかく蓮二はやっていたので覚えていた

これならと質問に答えて行く

途中から答えられなくなった上司は無言で資料を読んでいた

的確に答えていく


「質問は終わりだ。有意義であった、あぁ、それと後藤君」

「は、はいなんでしょうか」

「君はもう少し自分の担当の仕事の事を覚えておきなさい」

「は、はい!」

「それでは失礼するよ」


男性はそう言って去っていく


「今のは誰なんですか?」

「知らないのかい? あの方はこの会社の社長の親友であり社内の治安維持を任されてる獅子神源次郎」

「治安維持? なんですかそれ……うん? 獅子神?」


2週間ほど前にその名字を聞いている


「この会社は数年前にあった事件よりも前から何件も事件があるんだが」


(よく潰れないなこの会社)

所謂暗黒期があり昔新聞で話題になっているレベルの話


「横領や偽造の犯罪行為が多かった頃にその人らを皆首にして会社そのものを作り替えた2人のうち1人、だからこの会社には特別に社長の次に権力を持つ治安維持科がある」

「この会社なんとも凄いですね……」


(上司告発したら首になるんじゃ……)


「だからバレるとまずいんだよ」


身体が震えている

もろ目を付けられる行為をしている上司はバレた瞬間首が飛びかねない


「正直あの人と対峙するの無理ですよ」


蓮二は断言する、多分あれは勝てない相手だと


「そ、そうだな」

「…………」


無言で威圧する、どうすればいいか分かるよなと威圧する

これを機に押し付ける量が減ればいいなと考える蓮二

どうやら獅子神源次郎がこの部署に来るのは初めてのようだ

あくまで噂だけ聞いていたと言った感じなのだろう

この怯えようなら当分は大丈夫だろう


「それじゃ私は私の仕事をやるよ……会議頼むよ」

「はい」


上司こと後藤は余りの恐怖で一気に老け込んでしまった

それには流石の蓮二も同情する

(何はともあれ休み取れた)

すぐに獅子神一鬼と竜胆天音に連絡を取る

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