社畜 修羅と化す

良さそうな防具を見つけて値段を聞く


「これは幾らですか?」

「それはですね……100万になります」

「ひゃ、100万!? 高い……」

「その横にあるのは150万です。掘り出し物は人の手では作れないのでかなり高額になってます」

「……掘り出し物は諦めます」

「ま、まぁ掘り出し物でなくても防具は身を守るのに使えますからそれでも10万~30万とかですけど……」

「高いなぁ」


掘り出し物を諦めて人の手で作られた防具で探す

ダンジョンが出始めた10年前とは違い加工技術が進歩している

掘り出し物程の性能は無いがそれでも戦えるだけの性能はある

一瞬で溶けて無くなったあの剣も普通に使えば良い切れ味と耐久力を持つ武器であった

悩んだ結果買わない事を決めた

何度かダンジョンに潜り掘り出し物を買う方が良いと考えた

異能の炎を防御に使える

気をつけて距離を取って戦えば攻撃を受けることも無いだろう

家に帰って姉弟に渡す食べ物を選んでダンボールに詰める


「明日昼休みの時に送ろう」


明日の仕事で使う資料を纏めてバックに詰める

翌日会社へ向かう

いつも通り上司から無理難題を押し付けられる


「これ今日の午後までにやっておいて」

「は、はい……」

「午後は会議あるからこれも頼む」


同僚の仕事を押し付けられながら自分の仕事をこなす


「これ頼むわ」

「至急これを」

「あぁ……全部ここに置いといてください」

「いやぁ助かるよ」

「もう少し素早くやれよ」


昼休みに会社を抜けて郵便局に行く

家が会社の近くの為一度家に帰ってから郵便局に向かう

何度もやっている行為なのでテキパキと済ませる


「げっ、やばい間に合うか」


今日は混んでいた、急がないと仕事に間に合わない


「急がないとなぁ」


郵便局から会社は距離がある

本来なら間に合わない時間、服装はスーツ走るのには向かない

深呼吸をして息を整える

地面を蹴り走る

人にぶつからないように気をつけながら走る


「早っ」

「何かあったのかな?」

「あれ? あの人昨日の」

「知り合い?」

「流石に気のせいか? いや配信者の天音って子の救助した人がスーツの男性だったんだよ。一瞬見た顔がその人に似てるなぁと思って」

「スーツなんて色んな人着るし別人じゃない?」

「まぁだよな」


昼休みが終わる前に会社に着く

直ぐに自分の机のある所に向かう


「さて、午後の仕事はクソ上司の奴と……げっ、なんか増えてる……はぁ、この量は残業確定だなぁ。今日中に帰れるかなぁ」


仕事に取り掛かる

蓮二はかなり優秀で他人の仕事も含めて全ての仕事を期限以内にミス無くこなしている

その為それをよく思わない上司や同僚に使われている

怒りを覚えながらも心の内に仕舞い仕事をする


「……またダンジョン潜ろうかなぁ」


仕事を早く終えて服装そのままにダンジョンに向かう

ダンジョンに潜るとか昨日戦った魔物が現れる

魔物をストレス発散の道具にするつもりでいる

ダンジョン内に蓮二の叫びが反響する


「あのクソ上司! 何がやっといてだぁ! アイツらもあいつらで何が素早くやれだ! てめぇでやれやぁ!」


叫びながら炎を放つ

魔物は為す術なく消し炭にされる

魔物を消し炭にし魔石を回収してどんどん奥へ進んでいく

二階層へ行く

3体同時に小型の魔物が現れる

前回は避けられたが今回はそうは行かない

炎が熱く強く燃え上がる


「クソがぁ!」


魔物目掛けて放たれた炎は魔物に逃げ場を与えない

異能の炎は前方にある全てを焼き尽くす

怒りをそのまま炎に変換して放つ

蓮二は怒り狂っている

どんどん奥へ進んでいく

今の蓮二に恐怖は無い、ただ目の前の魔物を焼き尽くす


「こ、怖い」


その姿を後ろから見ていたのは天音であった

また会えないかと再びダンジョンに来たら丁度スーツ姿の男性が入っていくのが見えてこっそり後を着いてきていた


「声的にあの人で合ってると思うんだけど……会社で凄いストレス貯めてるのかな?」


今出ていったら焼き尽くされかねないと思い出るに出られない

蓮二は天音に気づかずどんどん奥へ進んでいく

その後をこっそりと着いていく

魔物を炎で一撃で倒していく


「やっぱり強い。3級の魔物を一撃で倒すなんて」


三階層の魔物も難なく倒し進んでいく

律儀に倒したら魔石を回収して進んでいる

変わらぬペースで戦ったことの無い魔物も焼き尽くす

四階層の魔物も異能の炎で焼き尽くす

(凄い強い……あっ、この先は……)

天音は気付く

天音が事前に調べた情報ではこの次の階層にその中ボスがいるという話だ

中ボスと言うのはダンジョン内に存在する魔物の中でも強く特殊な魔物の事を探索者の中でそう呼んでいる

中ボスは特殊で一度も討伐されていない中ボスはかなり強い

討伐後再湧きした中ボスは弱体化する、弱体化しても強いのだが最初の中ボスはそれよりも強いのだ

そしてこのダンジョンの中ボスは討伐されていないと言う情報を天音は持っている


「流石に不味いですよね? 多分知らないでしょうし」


昨日ダンジョンに入るのが初めてと言っていた

もし本当に何も知らないのならこの先に中ボスが居る事も知らない

3級の魔物を圧倒出来ても中ボスに勝てるとは限らない、それだけ中ボスは強いのだ

現在分かる範囲で最小人数討伐記録は2名、うち1人は支援系の異能者でその異能を頼りにもう1人が戦って勝った

それもそのもう1人は希少な空間移動系の異能者でかなりの実力者だと言う

(バフもない状態で1人で勝てるとは思えない)

勇気を出して止めようとするが魔物が現れたので咄嗟に隠れる

現れた魔物を瞬殺して奥へ進んでいく

そして中ボスの居る階層への階段を降りていく

天音は勇気を出して階段を降りる


「あ、あの!」


声をかけると振り返る


「き、君は……昨日の」


先程までとは違い弱々しい声を出している


「はい、貴方に助けて貰った……あっ、私は竜胆天音と言います。天音で配信者をしてます」

「し、知ってます。偶に見ているので……そ、それでどうしました?」

「この先は中ボスと呼ばれる強い魔物が出てきます。危険です」

「ち、中ボス? そんな事言われても……もうなんか目付けられてます」

「へ?」


天音が勇気をだして声をかけた時にはもう2人は階段を降り切っていた

そして中ボスの目にはバッチリと2人が映っている

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る