社畜 魔石を換金する

「あ、あの」

「どうした?」

「貴方は探索者ですか?」

「いや、今日初めてダンジョンに潜ったから別に探索者でも無いな」

「は、初めて……?」


何を言っているんだこの人という目をしている

初めてで3級ダンジョンの魔物を薙ぎ払うなんて普通では無い

コメント欄も混乱している


『初めて?』

『このダンジョンがではなく? ダンジョンに潜るのが?』

『初めてで3級ダンジョンに潜るとか……』

『流石にジョークだよな?』

『いやでも嘘ついてるようには見えない』


「流石に冗談ですよね?」

「いや? 本当に初めてだよ。このダンジョン家の近くにあってさ」

「そ、そうなんですね。ならなんでこのダンジョンに?」

「昨日仕事終わりに……まぁ仕事終わったのは今日なんだけど……丁度見かけて休みだし試しに行ってみるかで来た。それで異能で魔物倒せるから進んでたら声が聞こえて駆け付けた」


全て事実なのだが少女は信じれていない

命の恩人を疑うと言うことはしたくは無い、ただ余りにも内容が信じ難い

数年間探索者として活動して居て一度として見た事ないタイプの探索者


『そんな気軽に行く難易度のダンジョンじゃねぇんだよなぁ』

『異能強過ぎ』

『休みなのにスーツ……普段着か休日出勤ある人か』

『残業したんだろうなぁ』

『社畜か』


入口に着く

すると人々が集まっていた

見覚えがある人もいる

(来た時に集まってた人達か)


「それじゃ」

「あっ、ちょっ……」

「天音ちゃん無事!?」

「奇跡だ、もうダメかと思っていたのに」

「良かったよ~心配したよ~」


少女の元に集まる

皆彼女を心配して集まったのだ

蓮二は人波を素早く掻き分けてこの場を去る

押し退けるわけにも行かず少女は呑まれ蓮二を見失う


「あんたありがとうな……あれ? どこいった?」


1人がお礼を言おうと探すがもう居ない


「てかさっきの人誰? 一緒に出てきてたけど探索者なの?」

「あの人が助けたのか?」

「配信見てたから間違いない彼が助けてた。どこ行ったんだろ」

「スーツの人ならそそくさと帰ってたぞ」

「何も語らないスーツの紳士か」

「3級ダンジョン1人で潜れる程の実力者、レイと同等の実力者って事?」

「レイ?」

「シズクちゃんの配信に最近協力してる探索者、3級ダンジョン1人で周回してる猛者」

「日本にそんな怪物が2人も現れたか……」

「日本に隠れ猛者が何人もいるって話があるけど」


ダンジョンは危険だ、例えその等級のダンジョンを1人で周回出来る実力があってもパーティを組んで大抵安定を確保して戦う

1人で戦うのは自殺行為、どれだけ強くてもダンジョン内で囲まれたりすれば一溜りもない

人集りから離れた場所で蓮二は一度止まる


「凄い人集りだったなぁ。人混みは苦手、魔物も怖かったし暫くはダンジョンいいや。あっ、確か魔石は取引所だったよね」


近いので取引所に歩いて向かう

今日は魔石の換金なので1階の受付に行く


「魔石の換金ですか?」


受付の男性が対応する


「はい、魔石の換金をお願いします」

「……3級の魔石ですか……少々お待ちを」


魔石を受け取り数と大きさ等を計算している

(そんな多くは持ってないけど幾らになるんだろ? 10万行って欲しいな……いや流石に行かないか)

暫くして計算が終わったのか紙を見せる


「これが合計金額となります。口座に振込みますか?」

「はい、口座にお願いします」


(15万、探索者かなり稼げるなぁ。……月に一度くらい行くかな?)

3級の魔石は魔石の中でもかなり高い

魔石は等級によって大きさが変わり強さで透明度が変わる

それによって金額が変動する

素材と言う魔物が稀に落とす物は倒すと必ず落ちる魔石よりも高く売れる

素材は種類によって値段が変動する

最初に戦った魔物より熊の姿をした魔物の素材の方が高い

3級の魔物を複数体倒せるだけの実力があれば稼ぐ事が出来る

それだけ3級のダンジョンの危険性が高く取引所で換金される魔石の数が少ないからである

(探索者になれば今の仕事やめても……いや、探索者なんて何があるか分からない。偶にやるくらいが丁度良い)


「それではここに必要情報の記入をお願いします」


必要な情報を書いて提出する


「それでは後程振込みます。翌日には振り込まれますのでご確認を」

「分かりました」


(装備は買っておいた方がいいのかな? 溶けると嫌だし武器は要らないかな? でも防具は必要だよな)

2階に行って防具を探す

武器と同じでかなり値段がする


「ここの防具と武器値段書いてない……」


素材や魔石、鉱石などで人の手で作られた防具や武器とは見た目が完全に異なる

ファンタジー世界にあるような見た目をしている

(これ凄い強そう、これは……布? 防刃仕様なのかな?)


「それは掘り出し物です」


店員に話しかけられる

突然背後から話しかけられビクッと身を震わせる


「あぁすみません。初めて見たので知らないのかと思い」


店員の男性は謝る


「い、一応昨日来てます……それで掘り出し物と言うのはなんですか?」

「それは失礼しました。掘り出し物と言うのはダンジョンで手に入った武器や防具、魔導具と呼ばれる道具の総称です。値は張りますが性能が高いです。そして掘り出し物の武器は人の手で作られた物と決定的に違う点があります」

「違う点?」

「一部の人に異能と呼ばれる力が宿っているのは知ってますよね?」

「はい」

「それと似た力を持っています。物によって能力の種類、出力が異なりますが普通の武器とは一線を画しています」

「成程……」

「ここに並ぶのはあくまでも探索者が売りに出した武器や防具なので性能の高い武器は少ないですが最近ここで買った武器を使って活躍している探索者が居ると聞くのでここで売られている武器でも戦闘で使うに十分な性能は持っているのかと」


(成程……護身用には持ってた方がいいのかな? ただ値が張るって言ってたしなぁ)

武器を買うか悩む

一先ず武器は置いておいて掘り出し物の防具で良さそうな物を探す

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る