社畜戦う

ダンジョンに入る

洞窟型のダンジョン、薄暗い一本道

結構道は広い


「こ、怖いなぁ」


魔物がリポップする

3級の魔物、探索者の中でも実力者が数人がかりで戦うような魔物


「お、大きい……怖いなぁ帰ろうかなぁ」


例外はいるが1人で戦うような相手では無い

魔物は蓮二を見つけると武器を構えてゆっくり歩いてくる


「た、確か異能あったような……」


社畜生活で忘れかけていたが蓮二は異能を持っている

異能を得た時に情報が流れてきて吐いた記憶が蘇り口を抑える

(……さすがにあれはもう無いか。アレ凄い気持ち悪いんだよなぁ)

異能を発動させる


「こう言うのはやっぱり名前を言うのかな?」


アニメや漫画を思い浮かべる

必殺技や能力を使う時名前をいう作品が多くある

人によるが異能が使える配信者の中にも異能の名前らしき物を言っていたりする

周りを見て人が居ないのを確認する


「異能……や、やっぱり辞めよ」


恥ずかしくなり言うのを辞める

そもそも蓮二の異能の発動には必要の無い行為

気を取り直して異能を発動させる

蓮二の周囲に燃え盛る炎が現れる

異能名 憤怒の火、異能の炎を操る力

属性系の異能の中で炎は一番数の多い

一番珍しくない異能の種類

魔物は武器を振り上げて蓮二に叩き付ける


「ひぃぃ」


咄嗟に周囲の炎を武器に当てて武器を受け止める


「び、びっくりしたぁ」


ジューと何かが焼ける音がする


「確かこれって纏えるんだっけ?」


試しに炎を剣に纏う

メラメラと燃える炎が刀身を燃やす


「で、できた」


炎を纏った剣を振るう

魔物の武器を焼き切りそのまま魔物も容易く両断する

それと同時に剣が溶けて無くなる


「10万が……」


珍しく高い買い物をしたのに一瞬で消えた

ショックで落ち込む

(こんな事なら兄弟に送る缶詰買えば良かったなぁ。と言うかそろそろ送るかぁ)

蓮二には2人の姉弟が居てその2人に少しの金と偶に食料を送っている

魔物が消滅して魔石が落ちる


「確か魔石だったかな? 魔物を倒すと落ちる……一撃で倒せるならもっと進むか。纏わないで炎ぶつければよかった」


また魔物が現れる

異能で発生した炎を操る

炎に触れても熱くない、手のひらに炎を集めて手のひらを魔物に向けて炎を放つ

魔物は武器で炎を防ごうとするが炎は武器ごと魔物を焼き尽くす


「もしかしてここ弱いダンジョンなのかな? 一撃で倒せるなら小遣い稼ぎに使えそう。それとも僕の異能が強いとか? ははっ、ありえない有り得ない」


このダンジョンが3級と呼ばれる人類の限界値とされている難易度のダンジョンである事もこのレベルの炎の出力を持つ異能者はそう居ない事も探索者に詳しくない蓮二はその事を知らない

自己肯定感の低い蓮二はそもそもその可能性を自ら否定する

なんか思ったより炎出てるけど異能ってこんな物なのかなと思っている

そしてこの異能が普通の属性系の異能とは異なる事も知らない

一本道を歩く

2体同時に現れるが異能の炎で一瞬で焼き払う

異能が強過ぎて手応えが全く無い


「楽で助かるなぁ。なんか騒いでたあれはなんだったんだろ」


慌ただしくダンジョン前で騒いでいた

内容は聞いていないがかなり切羽詰まっていた様子だった

探索者でもない自分には出来ることは無いと考え引っ込んでいた

最も彼らが求めていたのは蓮二のような人材が必要だった事を知るのは事が終わってからであった

不幸か幸運か彼らが蓮二に気付かずすれ違った事で少なくとも蓮二の運命は変わった


「怪我人でも出たのかな? 魔物の攻撃当たったら痛そうだし事故はあるし無事な事を祈るかぁ」


魔物を炎で倒し魔石を回収しながら進んでいく

クネクネと曲がった道ではあるが一本道なので迷うことが無い

曲がった道で魔物と遭遇する

自分より大きい2m程の黒いモヤに包まれた魔物

蓮二はビビってその場から逃げる


「ひぃぃ!」


異能は解除するまで発動し続けている為すぐに対応できるが逃げる

少し逃げてから炎で攻撃して倒す


「心臓に悪いって……」


魔物を倒して次の階層へ行く


「いきなり強くなるとか無いよね? ……無いよね?」


恐る恐る階段を降りていく

次の階層では魔物が待っていた、一階層の魔物とは違う魔物がそこには居た

身長は130cmと言ったところ、先程の魔物よりかなり小さい、短剣のような武器を持っている

人型と言えば人型だが手がかなり細く胴体は太っている人型と言うには少し歪な形をしている

数が3体居る


「ひっ、3体……で、でもさっきまでの魔物に比べれば怖くない」


周囲に纏っている炎を操り飛ばす

魔物は炎を避ける、速度も範囲もさして広くない炎など魔物にとって避けるのは容易い

先程までの魔物が避けないで一撃で倒せていたから油断していた

魔物が突っ込んでくる


「ひぃぃ! ごめんなさーい!」


魔物を追い払うように手を横に振るうと異能が反応して手の動きと同じような形で炎が放たれる

横の攻撃は避けづらく一体は避けるが2体は焼き切られる

一体がそのまま突っ込んでくる

魔物が短剣を振るう

炎で短剣を防ぐ、短剣が燃える

魔物との位置はかなり近い、オーバーキルになるが回避出来ない程の炎で焼く

魔物は消滅して魔石を落とす


「怖かったぁ……死ぬかと思った……も、もう帰ろうかな」


戻ろうとした時微かに声がした気がする


「今の声? 探索者? いやでも」

「た……て……」


再び微かだが声が聞こえた

(だ、誰か居る!?)

他の探索者が潜っているのだと考えるがダンジョンの入口の騒ぎも考えて最悪の可能性が思い浮かぶ

ダンジョン内部に誰かが取り残されている可能性

先程ダンジョンからでてきた人々は救助しようとして失敗していたのかもしれない

あくまで蓮二の予想に過ぎない

今まで戦ったこのダンジョンの魔物は一撃で倒せるけれどこの先の魔物もそうとは限らない

魔物との戦いは命懸け、下手をすれば死ぬ

目の前まで接近された時死ぬかと思った

そのせいか恐怖を感じている

だけど本当に人が居るのなら助けを求めているのならここで見捨てる訳には行かない

震える身体に鞭を打ち進む

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る