第48話 撤収と万全を期す

「コハルさん…!」

「当初の予定通り、此処で引き返します!!」


「そして、次回でタングステン鉱石の採取を目指します!!」


「……」


 俺は真面目な表情でコハルに話す。

 俺の言葉を聞いていたアスは、安堵な表情を見せている。


 コハルは困った笑顔で、俺たち三人に話し始める。


「残念だけど~~。じゃあ、帰ろっか!」

「今のあなたたちなら、先ず勝てたのと思うのに~~///」


 コハルはそう言うが普段。好戦的なアスが今日の決着を望まなかったのは、アスなりの理由が有るのだろう。

 此処(中ボス手前)に来るまでの所要時間も分かったし、鉱床内に居る魔物種類も把握出来た。


 後は、これを今日の反省会で提示して、中ボスを倒す作戦を決めるべきだと俺は感じた。


 ☆


 今回も鉱床出口直前で、歩哨交代に来たオーク三体と遭遇したが、最後だから俺は『ブランド』で魔法剣を作って、華麗にオークを切り裂いた。

 アスも魔力温存の心配が無いから、唱えたい魔法を唱えさせてオークを退治していた。


 リンも暇だからの理由で、ピストルでオークを撃っていたが、オークにピストルの弾は殆ど効いていなかった///

 ピストルに関しては、攻撃では無くリンので有る!///


 言うに及ばずで、戦果は俺たちの圧勝で有った!!

 だが、コハルは俺たちの戦闘を見て苦笑いしていた。


 コハルの中ではきっと『それを、中ボス戦で使えば良いのに!』と、感じていたのだろう。


 ……


 俺たちは無事に帰り。本日の鉱床探索反省会を、前回と同じ様に厨房で開く。

 けど、今回はコハルがお土産をくれなかったので、王国城内の黒魔法使い控え室から、アスが失敬してきた紅茶だけで有る。←前回の反省会で飲んだ同じ紅茶葉


 俺は前回同様。紅茶を一口飲んでから、和やかな表情でリンとアスに向けて話し始める。


「リン、アス。今回もお疲れ様!」

「訓練の成果も出て、中ボス直前まで来られた!!」


「今回は中ボスへの対応策や、体力を温存しながら、其処に行き着くまでの作戦を立てたいと思う!!」


 俺の言葉の後。

 アスが穏やかな表情で、俺とリンに向けて話し始める。


「スズヤさん、リンさん!」

「私も今日の冒険をしながら、今後の事を考えていました!!」


「今日みたいな連携を取った戦闘をすれば、お互いの疲労は少なくて済み、前回と比べて私は、魔力の消費をかなり抑えられました!」

「作戦としましては……魔力の入ったアンプルを追加で数個貰い、更に以前シスターから貰った丸薬を鉱床直前で飲めば、ほぼ確実に勝てるのでは無いかと感じています!!」


「アスが以前貰っていた、アンプルを王にねだる訳か!」

「だけど……素直にくれるのかな?」


 俺は理解した表情でアスに話す。

 最初の鉱床探索前。アスは王からのプレゼントで、魔力の入ったアンプルを一本貰っている。


 そのアンプルに入っている液体を飲めば、魔力が尽きた状態でも全回復する代物だ。

 アスは和やかな表情で、俺に話し始める。


「ナポレン王がダメでしたら、コハルさんに頼るだけですよ。スズヤさん!」

「私は一本持っていますので、スズヤさんとリンさんので、最低二本は欲しいですね!!」


「そうだね、アスちゃん!」

「二人が大怪我以上をしたら、私の魔力も一気に余力が無くなるからね!♪」


 リンは嬉しそうな表情で、話しの輪に入る。

 リンは、大怪我以上に対応出来る回復魔法『ドホラミン』を習得しているが『スイスイ』二倍以上の魔力を必要とするから、俺とアスが大怪我以上を数度繰り返すとリンの魔力は一気に尽きる。


「はい、そう言う事です。リンさん!」

「ですので、アンプル三本以上を確保してから、次回の探索をするべきです!!」


 アスは和やかな表情で俺とアスに話す。

 アンプルに関しては早速。明日コハル経由で王に頼んでみよう!


 殆ど作戦も立てたも同然に成ってしまったので、後は三人でお茶と談笑を楽しんだ。


 ☆


 翌週のとある日……


 今日は、三回目のリュウガンロ鉱床探索日で有る。

 今回で鉱床手前に居る中ボスと対峙して、中ボスを倒して、タングステン鉱石を採取して、採取したのをコハルの力で王国城に搬送させる。


 アンプルに関しては、素直に人数分用意してくれた。

 だが、凄く貴重な物らしいので『大切に使え!』と、王からの言伝をコハル経由で貰っている。


 また、シスターから秘伝の丸薬も貰って、中ボス戦直前に飲む。

 俺は力(攻撃力)を上げる丸薬。リンとアスは魔法効果を高める丸薬だ。


 俺たち三人は準備を整えて、王国城に行って、王国城でコハルと合流して、コハルの魔法でリュウガンロ鉱床に瞬間移動する。


『シュン』


 瞬間移動でリュウガンロ鉱床。坑道入口に到着するが……今回はオークやゴブリンの歩哨姿は見えない?

 その周囲も、魔物らしき姿は見えない??


 それを見た俺は、不思議そうな表情で一人しゃべりを始める。


「あれ? 今回は居ないね…?」

「魔王軍も疲弊している感じだから、歩哨を置く余裕が遂に無くなったか??」


「スズヤさん……多分ですが、坑道内に身を潜めているのでしょう!」

「そして、私たちの実力が、魔物達に伝達もしているのでしょう…!」


 アスは目を細めながら俺に話す。

 身を潜めているか……敵も賢くなったな!


 すると、リンが嬉しそうな表情で、俺とアスに向けて話し始める。


「じゃあさ、スズヤ、アスちゃん!」

「私の、ワットブライトを使おうか?♪」


「これはね一瞬だけど、凄く眩しい光を出せるんだよ!♪」

「オークが坑道内に隠れているなら、ワットブライトで脅せば良いんだよ!!♪」


 光球魔法で有る『ワットブライト』に、そんな使い方が有ったのか!

 今回の初戦は、リンが活躍する場面に成りそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る