第23話 緊張が走る城下町
……
その日の夕食。
俺はリンを厨房補助で使って、料理を作り上げる。
今晩のメニューは、焼きサケ(添え野菜は粉ふき芋)。ホエイを活用した、野菜スープ(キャベツ・タマネギ)。後は定番のライ麦パン二切れと牛乳で有る。
養護施設の食堂には、昨夜はシスターだけで有ったが、今晩は神父も来た。
「これは、これは、スズヤは本当に料理上手ですな!」
「子どもたちもさぞかし、喜んでいるでしょう!!」
神父は、俺の作った料理を見て、和やかな表情で俺を褒めてくれた。
食事前の言葉が、神父から発せられる。
だが、今日の言葉は何時ものと違った。
「みなさん。ご存じですが今日。魔王軍の配下と疑われる(大型)コウモリに、ミクとナツが遭遇する事件が発生しました!」
「幸い。アスが対処してくれましたので、アスを含めミクとナツに怪我は有りませんでした」
「そして、
「パプテトロン教会は、城下町に有る教会とは言え、今後この様な事が頻発する可能性が高いです!」
「屋外で遊ぶ時は必ず、複数の人で遊ぶ事や、一人で勝手に出掛けるのは止めましょう」
「では、今日も神に感謝して、いただきましょう!」
「いただきます!」
『いただきます!』
神父の食事前の挨拶後。
子どもたちも、食事前の挨拶を元気よく言って、今日の夕食が始まる。
(思っていた以上に、メルメーサ王国は劣勢なんだな…)
(まぁ、前世界の共産国見たいに、最後は質より量で来られたら、厳しいのは変わらないからな……)
……
夕食の評判は、先ず先ずで有った!
子どもたちが部屋に戻る時に『スズヤ先生。美味しかったよ♪』と、笑顔で言ってくれたり『さっき食べたスープ美味しかった。また、作ってね!』と、リクエストしてくる子もいた。
俺は思わずドヤ顔で『そうか、俺の作る飯は旨いか?♪』と、子どもに言ってしまう///
だが、子どもは『うん! 美味しい♪』と、笑顔で言ってくれたので良しとしよう///
アスの方も『スズヤ先生は、男性の割りに本当料理上手ですね!』、『この国では男性が率先して料理をする人が少ないですから、スズヤさんのお嫁さんに成る方は、さぞかし幸せでしょうね♪』と、満面の笑みで言ってくれた!
「~~~///」
だが、アスの言葉を聞いていたリンは、何故か恥ずかしがっていた!?
夕食後の後片付けも、俺はリンと一緒に片付ける。
リンは養護施設の管理者で有るが、アスがしっかり者で、リンに仕事が回ってこないので俺がリンを活用する?
こうして、俺の初日は問題なく終わった……
☆
数日後……
今日も、俺はリンを連れて市場に行って、市場で買い物を済ませて、教会に戻ろうとした時。
前世界で言う、火の見
パプテトロン市街には、この様な監視塔が幾つか有る。
『カン、カン、―――』
『カン、カン、―――』
「魔王軍襲来! 魔王軍襲来!」
「敵ゴブリン30体以上が、パプテトロンP4ゲート方面から接近中!!」←市場からの最短ゲート
「王国民は速やかに避難! 速やかに避難!」
『カン、カン、―――』
『カン、カン、―――』
「繰り返す!」
「魔王軍襲来! 魔王軍襲来!」
「敵ゴブリン30体以上が、―――」
『わぁ~~』
『逃げろ~~』
『遂に、魔王軍が来たぞ~~(汗)』
『…………ふぅ!』
王国民たちは、一斉に避難を始める。
走って逃げる人。店を慌てて閉める人。中には平然としている人も居る!?
『ガツ、ガツ、―――』
「ひひーーん」
その中を馬に乗った兵士が、王国城に向けて駆け抜けていく。
王国城への緊急報告だろう。
メルメーサ王国の通信システムは、伝書鳩しかまだ無い。
俺やリンも避難と言うか、教会に急いで戻る。
だが、俺とリンは両手に荷物を持っているので走る事は出来ない。
リンは焦った表情で、俺に話し始める。
「スズヤさん!」
「この来襲はやはり……先日の報復でしょうか!?」
「リン……思いたくは無いが、間違いなくそうだろう…!」
「偵察隊が消息を絶てば、殺されたと考えるのが普通だからな…」
俺は眉をしかめながらリンに話す。
まだゴブリンの群れは、パプテトロン市街に侵入していないはずだが、王国軍は水際で防ぐ事が出来るだろうか!
俺とリンは監視塔から響く鐘の音と、拡声機から聞こえる、兵士の叫ぶ声を聞きながら、早歩きで教会に戻る。
『ガララ、ガララ、―――』
『パン、パン、―――♪』←鞭を叩く音
「急げ、急げ、―――」
「王国の興廃この一線にあり!」
『パン、パン、―――♪』
『ガララ、ガララ、―――』
「……」
「……」
俺とリンは教会に戻る途中。王国軍の馬車部隊とすれ違う。
前世界で言えば、軍の車両部隊だ。
馬車を
幌が付いた荷車には、武装した兵士が搭乗している。
言うまでも無く、ゴブリンを退治する迎撃隊だろう。
だが、魔法使いらしき者の影は見えない?
相手がゴブリンだから、歩兵部隊で対処出来ると踏んでいるのだろう。
ゴブリンは30体以上と言うが、こっちの馬車部隊は5両以上通過して行くから、数の上ではこっちの方が上のはずだ!
……
俺とリンは荷物を両手に持ちながら、どうにか教会に戻る事が出来た。
教会の扉前では、シスターが心配そうな表情で立っているのを見掛ける。
「あっ……良かった。スズヤとリンが戻って来ました!」
俺とリンが、シスターに声を掛ける前に、シスターが声を掛けてくる。
俺とリンは、シスターの側に近付いてから『弱った』表情で話し始める。
「ただいま、戻りました。シスター!」
「私も、同じく戻りました。シスター!」
「えぇ、えぇ……。二人とも無事で良かったです……」
「さぁ、早く中に入りましょう!!」
「直ぐ側まで、魔王軍は来ていますから!」
シスターは急かす表情、俺とリンに言う。
状況が、状況なので、俺とリンも早足に教会内に入った……
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