第2話 ここが異世界だと自覚する

「スズヤさん。今はとにかく体を休めてください!」

「あなたはさっき、自殺とか電車の駅と言いましたが疲れているんですよ!!」


「……」


 リンは少し困った表情で言いながら、俺をベッドの方に誘導させる。

 今までの動作から見て、リンは凄く優しい女性だと俺は感じる。


 俺はリンに迷惑を掛けたくなかったので、リンの言われた通りにベッドに戻る。

 そして、ベッドに入った途端。頭痛は無くなった?


 俺はベッドに入ってから、困った表情でリンに話し始める。


「リンさん……本当に、電車とか駅は知らないのですか?」


「はい…。スズヤさんが口にするまで、聞いた事ない言葉です」

「この国には、そんな物は有りませんから……」


「!?」


(そんな馬鹿なと言いたいが……リンの言っている事は多分本当だろう)

(日本人に全く見えないリン。外の季節や雰囲気も自殺前とは全然違う…)


(実は、俺の自殺は成功していて、何処かの世界に飛ばされたのか?)

(それとも、昏睡状態で変な夢を見ているかのどちらかだろう……)


『コン、コン、―――♪』


 俺が頭の中で色々と考えていると……部屋のドアがノックされる。

 ノックの音でリンはドアの方に歩きながら、陽気な口調で俺に話し始める。


「スズヤさん」

「きっと、お母さんがスープを持って来てくれたのですわ!」


『ガチャ!』


 リンはドアを開けると、其処にはトレイを手に持った大人の女性が立っていた。

 言うまでもなくリンの母親だろう。


 表情もリンと良く似ているし、着ている服は淡色系ワンピースで有る。

 リンの母親が室内に入った後。リンは部屋のドアを閉める。


『パタン!』


 リンの母親は、俺の方を見ながら近付いて来て、穏やかな表情で声を掛けてくる。

 

「目が覚めたようですね」

「旅人の人……」


「……」


(旅人…。間違いない。ここは日本じゃ無い!)

(まさかと思うが……俺は、異世界デビューをしてしまったか!?)


 不幸な人間だけに訪れると言う、異世界の世界。

 その世界は、前世界では負け組でも異世界では、絶対勝ち組に為れるという異世界。


 俺はこの手の小説を読まないが、まさか、自分がその立場に成る日が来るなんて!

 前世界では哀れな人達も異世界デビューすれば、地位や名誉が勝手に付いて来て、更には幸せな生活が待っている……

 

 だが、チー牛おっさんが異世界デビューをしても、どうやって勝ち組に成るのだ!?

 俺の取り柄なんて、真面目と優しいしか無いからな!?///


 リンの母親は、室内に有るテーブルにトレイを置きながら、俺に言葉を続ける。


「温かいスープをお持ちしましたので、お召し上がりに成ってください」

「もし、食欲が有るようでしたら、パンもお持ちしますよ」


「これは、すいません///」

「本当に、ご迷惑をお掛けてしまいまして……」


 俺は恥ずかしい表情で、リンの母親に言う。

 リンの母親は、微笑みながら俺に話し始める。


「そんな顔をしなくても、大丈夫ですよ。旅人の人!」

「最近。この様な事が多いですよの!!」


「魔王軍も攻勢を強めていますからね……」

「今はしっかりと栄養を摂って、体力を回復させてください…」


「何か、困った事が有りましたら、私かリンに遠慮無く言ってくださいね!」


 リンの母親は、俺に話し終えると部屋から出て行く。


『パタン!』


(魔王軍か……俺に勇者にでも為れと言うのか!?)

(いや、運動音痴の俺が勇者なんかに為れるわけが無い!!///)


 俺がそんな事を感じていると、リンが穏やかな表情で俺に話し始める。


「スズヤさん!」

「スープは温かいうちが美味しいですけど、食べられますか?」


「えっと……では、いただこうかな!」


 腹は不思議と減っていないが、折角だし俺は食べる事にする。

 俺は少し恥ずかしい表情でリンに言った後。ベットから下りようとすると、リンが優しく制止ながら俺に言い始める。


「スズヤさん!」

「私が、持って来て上げますよ!!」


 リンはテーブルに置いてある、スープが入ったお皿を手に取って、俺の元に運んでくれる。

 俺はリンからお皿を受け取り、お礼をリンに言う。


「ありがとう、リン///」


「いえ、いえ、当然の事ですよ♪」


 リンは天使のような微笑みで俺に言ってくれる!

 前世界でも、こんな美少女と出会えていたなら、俺の人生は確実に変わっていただろう……


 リンの母親が作ったスープは、野菜たくさんのコンソメスープと言えば良いのだろうか?

 スープの色はコンソメ色で有り、キャベツ・じゃがいも・ニンジンなどの野菜が入っており、ベーコンかハムらしき物の少し入っている。


 リンから受け取ったスープ皿に、俺はスプーンを入れて、スプーンですくったスープを口に含む。


『パクッ』


「……」


(うーん)

(異世界の料理なんて殆ど知らないが、味が薄いスープだな)


(色はコンソメっぽい色をしているが、この世界にコンソメの顆粒やキューブなんて無いはずだから、そう見えているだけだろう)

(不味くは無いが……ガツガツ食べる味では無い)


「どうですか。スズヤさん?」

「私のお母さんが作るスープは、お母さん自慢の味なんですよ!♪」


 リンは嬉しそうな表情で、俺に感想を求めてくる!

 前世界での味の濃い料理に慣れた、俺の舌では物足りない味で有るのに!?


 だが、素直に感想を述べたら、絶対にリンは悲しむよな///

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