第293話 火傷

 僕は夕食を食べた後に自分の書斎にこもった。

 僕は浮かびながら考える。

 世界は外の世界と接触する方向に進んでいる。だが、各国はバラバラに調べると思う。

 外敵がいないため、連合する必要がなかったからだ。

 この先は外から持ち込んだ情報で決まるだろう。だが、神霊族と魔神族が見ているだけとは考えられない。龍族も関係しているので話す必要がある。だが、龍族は結界の解除を求めるだろう。広い空を求めているからだ。

 しばらくは、龍の島に行くのは危険かもしれない。だが、外の世界をしているのは龍族だ。過去の話でも龍族にききたいだろう。

 龍族のところに行くのは、導師に相談する必要があるようだ。

 ドアがノックされた音が聞こえた。

 僕はデスクの椅子に座る。

「どうぞ」

 そういうとノーラが入ってきた。

「お茶を入れました」

 ノーラはデスクにハーブティーの入ったカップを置いた。

「ありがとう」

「今日は浮かないのですか?」

 ノーラにきかれた。

「その日の気分で決めているよ」

「お行儀が悪いのでやめてください」

「でも、魔法の訓練でもあるよ。使う魔力は多いから、僕の魔力量を増やす訓練でもあるよ」

「そうなんですか?」

「うん」

 僕は思いっきりウソをついた。

 ただ、浮かんでいる浮遊感が心地よいだけだった。

「わかりました。失礼します」

 ノーラは書斎からおずおずと出て行った。

 目を見てウソをつくのは、罪悪感があるのを初めて知った。


 午前の勉強では魔道具を作れるようになっている。難しい紋章も魔法陣に書き込むことができた。

「これなら、そこそこの魔道具なら作れます」

 家庭教師のギードにほめられた。

「ありがとうございます。ところで、使い魔は人型が普通ですか?」

「そうですね……動物や魔獣などいますが、人型が主流です。……作るのですか?」

「はい。導師に勧められました」

「それなら、核を作りましょう。それに魔法陣を刻めばできますから」

「簡単なのですか?」

「今の君でしたらできます」

 その後は使い魔の特性や姿を決める。そして、それに合わせるように魔法陣を作り始めた。


「導師。人型の使い魔の件なんですが、性能は高い方がいいんですか?」

 僕は昼食の席できいた。

「ああ。高い方がいいだろう。なにか不満か?」

「それなんですけど、人型になると複雑になります。単純な使い魔の方が機能を盛り込めるんです」

「そうだな。だが、貴族のたしなみとして作って置け。それに、さらに応用できるようになれば、人型でも使えるようになる」

「まあ、導師の使い魔を見ればわかりますが、今の僕ではできません」

「それも、勉強だと思え。それに、紋章を勉強しているおまえと同等なら、私は宮廷魔導士という名を捨てないとならん」

「まあ、そうですが……」

「おまえの使い魔は特殊だ。それをわかってくれ」

 僕の使い魔はファンネルとスライムである。どちらも効率を優先して作ってあった。

 僕は貴族とは狭くて苦しいものなのかと不満があった。


 午後からカリーヌの家に行くと、メイドの案内でガーデンルームに移動した。

 中に入ると、いつものアルノルトのあいさつがなかった。

「どうしたんですか?」

 僕は暗いみんなに声をかけた。

「少し待って。紅茶を出してもらってから話すわ」

 カリーヌはいった。

 僕はいつもの席に座り、メイドから紅茶をもらった。

「失礼します」

 メイドは退席した。

「秘密の会議ですか?」

「ええ。そうよ」

 レティシアはメイドが部屋を出たのを確認する。そして、言葉を続ける。

「シオンの情報を隠れて探っていたら、お父様にしかられたわ。でも、私のしていることを知ったら、気付いたみたい。それで、口止めと調べることを禁止されたわ」

 レティシアは不満そうだった。

「まあ、それほど、大きな問題ですから」

「オレもだよ。レティシアが気付いたのを知って、オレの親父に連絡があったっみたいだ。理由もなく二時間も怒られたよ」

 アルノルトは暗かった。

「それは災難ですね」

「私も父上に口止めされたよ。どこで知ったのかわからない」

 エトヴィンはいった。

 僕は導師にいったとはいえなかった。

「私も注意されたわ。それにお父様は詳しく知っているみたいだった。シオンはなにか知っている?」

 カリーヌも表情は暗かった。

「少しですが、お父様には導師が先に話をつけていたようです。なので、お父様は知っていて当然です」

「そうなの? だから、大人は知っていたの?」

「おそらく」

 みんなはため息はつきそうな暗さだった。

「でも、シオンのいっていることは事実ということね」

 レティシアはぼそりといった。

「そうなりますね」

 みんなは黙ってしまった。

「宰相が動いているようですから、問題は大人に任せてよいと思いますよ」

 僕はいうがみんなの反応は鈍かった。

「シオン。無理にきいておいて悪かったけど、先のことは話さないで。怒られたくないわ」

 レティシアの反応をみると、僕の仕事で得た情報を探る気力はないらしい。

「……トランプでもしますか?」

 僕はきいた。

「少し、このままでいさせて。しばらくすれば元気になるから」

 カリーヌのか細い声が聞こえた。

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