第266話 唐揚げ
「シオン。世界を区切っている結界の柱を壊すのに、おまえは賛成できるか?」
導師は夕食の席でいった。
「その前に壊せる可能性があるのかわからないです。クンツさんでは壊せなかったらしいですから」
「そうか。だが、いつかは壊さなければならん。私はそう思っている」
導師は思うことがあるようだ。
「結界は神霊族と魔神族が関わっていると推測しています。ですので、神霊族を倒さないとならないと思いますが?」
「おまえは、そうみるか?」
「はい。それに結界の柱は物理的にも守られていると聞きました。ですから、柱を壊すには情報が足りません」
「有翼族が関係していると見るが、おまえはどうだ?」
「少なからず関係しているでしょう。それより、相手の返事が遅いのが気になります」
「……戦争は起こると思うか?」
「したくはないですけど、可能性は高いですね。有翼族では人族よりも優位だと思っているみたいですから」
「そうだな。だが、数は人族より少ない。こちらが一万ならあちらは五百ぐらいだろう。だが、空を飛べることを知った人族に、勝てると思っているようだ」
「ええ。浮遊魔法に飛行魔法。空の優位性はなくなりました。ですが、魔法では負けています。有翼族の魔法の使い方は他の種族より上手いでしょう」
「それでも、数の優位がある。おそらく、我が国だけでも勝てると思う」
「なら、安心です。……導師は結界の柱にこだわりがあるんですか?」
「ないとはいえない。ただ、世界を区切っている。それが不快に感じるだけだ」
「ですが、外の世界は安全だと思いますか?」
「そうだな。隔離されていて、外の世界を知らない。外の世界は私たちより進んでいてもおかしくないな」
「それで、神霊族にききたいのです。なんで、世界から箱庭にしたのか」
「その気持ちはわかる。だが、答えてくれないと思うぞ。相手は煙と一緒だ。存在自体があやしまれている」
「ですが、探知魔法を広げると必ずあみにかかります。すぐに隠れますけど」
「おまえの探知には引っかかるか……。なにがしたいかわからんな」
「はい。ですから、話をしたいのです。殺意はないようなので」
「神霊族と話すか。思ってもみないな」
「ですが、必要かと。今度、コールの魔法でも送ってみます」
「少し待て。相手は一柱でも存在は大きい。飲まれる危険がある」
「接触はしない方がいいですか?」
「……私としては関わって欲しくない。……だが、他に手はないか……」
導師は難しい顔をする
「コールを飛ばすだけですよ」
「それでもだ。……接触するのなら私も同行する」
「反対はしないのですか?」
「いつかは通る道だと思うからな」
導師はため息をついた。
導師は浮かない顔をしていた。
接触の日は後日に回した。
無詠唱魔法の家庭教師とダンスの生徒になりにカリーヌの家に行った。
今日もジスランに捕まった。
「案件は終わらないのですか?」
僕はきいた。
「あることはあるが、大したことはない。それよりも、とりのから揚げを教えてくれ」
ジスランはとりのから揚げに
ノーラはこっそり教えたのに、どこかで話したようだ。
「うちのメイドのノーラに聞きませんでした?」
「いや、きいてない。店で試作しているのを食べさせてもらった」
「それなら、そのお店にきいた方がよいですね。おそらくアレンジされてますから」
「それでも、基本は知っているのだろう? 教えてくれないか?」
導師には話すなといわれている。だが、ジスランには博打のことを話してもよい。ジスランは僕が前世の記憶を持っているのを知っているからだ。
「導師には内緒にしてください。また、怒られたくないですから」
「わかっている。僕も安易に手紙を書いてしまった。出した後で気が付いたよ。すまなかったね」
「いえ。博打では気にせず話していますから。それにこちらの事情も知っていますから問題ないです。メモに書きますので持っていませんか? すぐに書きます」
「うん。これに頼むよ」
僕はメモをもらうと、簡単にレシピを書いて渡した。
それを渡すとジスランの顔はゆるんだ。
「基本しか書いていません。
「うん。ありがとう。では、彼を案内してくれ」
ジスランは後ろに控えたメイドにいった。
ジスランはメモを持って足早に奥に行った。
すぐにでも作って食べたいようだ。
「こちらへ」
僕はメイドの後について歩いた。
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