第10話

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名前 名無しの鬼頭タカヒロ

職業 スライム ▼

レベル 18(+2)


HP 90/90(+10)

MP 20/20(+5)


腕力   40(+5)

体力   35(+6)

敏捷  277(+20)

精神   43(+10)

魔力   26(+5)


スキル 

 【突撃】

 【ぶきみな笑み】

―――――――――――


 ヤツは、うまかった。


「は、はは……やった、ぽよ」


 自分がヤツを捕食した事実に若干戸惑いながらも、とりあえず危機を脱したことに安堵する俺。思わずその場にへたりこんでしまう。


「それにしても……」


 まさかレベルまで上がるとは思わなかった。しかもステータス表示を見る限り、2レべも上がっている。


 スキル【死合わせ】で得たスライムの力……。

 ステータスが同じになったり、語尾がぽよになるといった表面的な変化はすでに理解していたが、食の好みまで同化しているとは考えもしなかった。



 ブゥーン……

 ……カサカサ

 ササササ……



「ふっ」


 なんてこった。

 今の俺にとってここは地上の楽園、1980円なんでも食べ放題の飲食店となんら変わりがないじゃあないか!

 

 見渡すと、どうやらここにはG系以外にも様々な種類の食材が取り揃っている。


 もし奴隷商のままこの状況を目にしていたら、おそらく俺は発狂して気絶していただろう。ただ、今俺の目に映る光景は……


「寿司!焼肉!天ぷぅらぁ!ぽよーん!!」


 こんな感じ。

 何から食べればいいかわからないくらい、魅力的な料理で溢れかえっている!


「いっただっきま~すぽよぉぉぉ!!」


 とりあえず、近づいてきた御馳走むしから順番に食していくとしますかぁ!


 牢屋番に見つからないように、こっそりとね!



◇ ◇ ◇ ◇



―――――――――――

名前 名無しの鬼頭タカヒロ

職業 スライム ▼

レベル 53


HP 298/298

MP 82/82


腕力  211

体力  245

敏捷  571

精神  290

魔力  270


スキル 

 【突撃】

 【ぶきみな笑み】

 【しびれアタック】

 【逃走】

―――――――――――


「もうお腹いっぱいぽよぉ」


 お腹を二度ポンポンと叩き、牢屋の壁を背もたれにして座りながらステータスチェックを怠らない俺。


 たぶん、食べ始めてから30分くらい経ったかな。


 ちょうどお腹が膨れるのと、料理むしが出てこなくなったタイミングが重なってラッキーだった。やっぱ食べ放題で、残すのはマナー違反だもんね!


 それにしても、なんか一気に強くなっちゃったな、俺。


 ただやっぱ元がスライムだからか、レベルが53にしては全体的な数値の上がり幅としては物足りない。ここまでレベル上がればもう少し強くなっててもいいように思うけど……。


「まぁ、贅沢言っててもしょうがないぽよ」

「おい貴様!さっきから何をコソコソと……」


 あ、やっぱ気づかれちゃったか。

 なんか半分寝てたから見てないのかと思ったよ、牢屋番さん。


「て、手枷はどうした!?貴様ッ」

「ん?ああ、邪魔だしさっき取ったぽよ」

「取っただとぉ!!」


 食事タイム中で邪魔だったので手枷は勝手に外した。

 スライム特有の滑らかさをうまく使えば、抜くのは容易かった。


「あとさ、もうここには用ないから鍵開けてもらってもいいぽよかな?」

「な、なにをふざけたことを……」

「いや、やっぱいいぽよ。自分で出られるかもしれないぽよ」


 俺は鉄格子の隙間に自分の身体を押し付け、手枷を取った時と同じような要領で脱出を試みた。


「よっと!おっ、出られたぽよ」


 いやー軟体のモンスターって便利だなぁ!

 ちょっとの隙間があれば物理法則無視したような動きができるもんな!


 スライムも、悪くない。


「な、ななんなああ!!貴様ッ……!?」

「大きな声出すなぽよ」


 俺は右手の人差し指を立て、牢屋番のくちびるに重ねた。

 目にもとまらぬ、恐ろしい速さで。


 あまりのスピードに恐怖を感じたのか、一瞬で固まる牢屋番のおっさん。


 いや、これは静かにしろという意味で、別におっさんのくちびるに興味があったからこんなことした訳じゃないから勘違いするんじゃねーぞ!


「牢屋の中にいた害虫どもは俺が全部食ったぽよ。同じ目に逢いたくなければ、お前の雇い主とエルフちゃん達の居場所を言えぽよ」

「ひっ!」


 牢屋番の引きつった表情が、脅しに屈していることを俺はわかっていた。

 いくらスライムの能力とはいえ、これだけレベルが上がればさすがに牢屋番くらい圧倒できる能力値にはなっているはず。


 もうここは強気で攻めて、一気にエルフちゃん達を取り戻そうと思う。


「言えぽよ」

「2階の……調教部屋に……」

「な、なんだとぽよぉ!!」

「んぐっ……がはぁ!」


 俺は「調教部屋」という単語に一瞬我を失い、牢屋番の口を押さえつけてそのまま勢いで壁ドンしてしまった。


「……死にたくなければ案内しろぽよ」

「んぐぅぅぅ!!」


 口は押えたままだったが、首を縦に2回振ったのでイエスと受け取った。

 俺は今、猛烈に怒っている。


 さっきは時間が解決するとか思ってたけど、前言撤回。


 やっぱ俺の大事な奴隷エルフちゃん達があんな小悪党どもにえっちなことされるのは我慢ならん!


「今助けに行くから待ってるぽよよ!みんな!」

「……」

「ぽよ?」


 なんか力が入りすぎてたみたいだ。


 牢屋番のおっさんは、泡を吹いて気絶した……ぽよ。

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