小説を書き終えて

大出春江

小説を書き終えて

 先日、12月24日のお昼に公開した『私の春の夢』をもって、『雄弁な影』から派生するように書き続けてきたシリーズが完結した。


 人生で初めて書いた小説が終わりを迎えたということで、せっかくなら初々しい感覚なり感想というものを残してみようというのが今回の趣旨である。


(できればシリーズに軽く目を通してから見てほしいが、エンタメであるのには変わらないため、皆様にお任せします)







 所感としては、一つスッキリとしたようでどこか寂しい気もする。


 卒業式が終わった直後のようにコレという実感はなく、しかし「悪くない時間だったな」と思えるような清々しさが妙に中毒性を帯びて心に残る。

 続きを書くこともできないわけではないのに、これ以上は蛇足だろうと、それだけは確信できる。


 まさに学生生活のような、振り返ってみれば一瞬で、どこか黒歴史めいてくる側面もあるのに、戻ってやり直すには惜しいほどに愛しい時間だったと思う。


 今回の小説を書くまでの経緯を当時の心境も含めて、思い出しながら書き出してみよう。




 世間がコロナ渦にてんやわんやしていた頃、私だけは例外だなんてそんなことはなく、いわゆる自宅時間をどのようにして過ごそうかと考えていた。


 そのとき、本当に理由も何もないけれども、小説に目がいった。


 もしかしたらテレビか何かの特集でも無意識に心に残っていたのかもしれないが、今となっては思い出せない。


 私は小学校の頃から小説が苦手だった。


 本は好きなので図書館には毎日のように通っていたけれど、いざ「小説」と言われると、退屈な国語の授業で教室の端のほうから順々に声に出して読むようなイメージで、堅苦しく、また内容もすんなりとは入ってこない憂鬱さを彷彿とさせる。


 しかし、私もそれなりの年月を重ねたようで、いままでの苦手を克服してみてもいいのではないかと、何様だろうか、考えた。




 さて、何から読み始めようか。

 

 少し考えると思い出したことがある。


 江戸川乱歩、小学生の頃に軽く眺めたそれは小説特有の堅苦しさはあまり感じなかったと、そんな記憶だけがあった。


 久々に手に取ってみると、これが面白い。

 私は気づけば図書館へと本を借りに行くようになった。




 それから半年もたたない頃だろうか、この年になって小説の面白さを知ったこともあってか、子供のような好奇心でいろいろな小説を読んでみたいと思うようになった。


 そして、ネット小説に行き着いた。


 無数にあふれる文章の山、それを見て一つ確信したことがある。


「小説は自由である」


 書き手も読み手も好きなように綴り、自由に耽る。


 この時初めて、書き手に回ってみたいと、そう思った。

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