親友のハーレムの外周でメインヒロインにお世話になっております
yuzuhiro
第1話
ざわざわざわ
始業15分前、廊下がにわかに騒がしくなり1人の少年の登場と共に教室内が賑やかになる。
「おいっす!」
スポーツバックを肩に担ぎ軽く右手を上げながら教室の前の扉から姿を現した騒ぎの元凶。
「きゃー! ソーマおはよー!」
「おう、
入り口付近で待ち伏せていた女子に気軽に話しかけたり、
「なあなあ
「あ、ああ。僕はひだりのはるはるが推し、だよ」
クラスの隅でこっそりとラノベを読んでいるおとなしめな男子の肩に手を回しながら話しかけたり。
男女問わずに気軽に声をかけることができるコミュ力、サッカーで鍛えられた細マッチョな肉体。女子を虜にする甘いマスク。
例えば誰に対しても分け隔てなく話すだけではなく、しっかりと相手の名前を呼ぶとか、高圧的な態度はとらないとか。スポーツは得意でも勉強はそうでもなかったりしてちょっとした隙みたいなものがあったり。
だから男女からの人気がある蒼眞の周りには人が集まってくる。まあ、それでもやっぱり比率で言えば女子に囲まれていることの方が多い。しかも、美少女と呼ばれるレベルの女子に。
そんな蒼眞の席は教室の真ん中の列の後ろから2番目、俺の前だ。
「うっす、
「おは蒼眞。今日も朝練お疲れさん」
ドカっと席に座った蒼眞が右腕で汗を拭こうとすると、横から伸びてきた白いハンカチが額を拭った。
「もう、ハンカチくらい使いなさいよ」
天使の輪ができるような手入れの行き届いた黒髪ロングに、キリッとした表情の美人系のクラスの委員長。 彼女の名前は
「はいはーい。
ガタガタとイスを引きずってきて、蒼眞の隣に座った元気系のギャルの
「はい、蒼眞くん。水分だけじゃなくて塩分も摂ってね」
塩分チャージのタブレットとスポドリをトンと机に置いたおっとりとした家庭的な雰囲気の
教室の真ん中で蒼眞を取り囲むタイプの違う美少女たち。ここに数人が混じって会話が繰り広げられるのが我が2-1のいつもの風景。
そして、この時点で俺は窓側の一番後ろの朱莉の席に避難している。まあ、あんなハーレムにいても居心地が悪いし、俺の席は当たり前のように朱莉に占領されてしまっているため戦略的撤退とも言える。
予鈴まであと5分。朱莉の席に突っ伏して寝る訳にもいかないのでスマホをいじっているとまたしてもクラスの空気が変わる。主に男子がソワソワとし出す。
それはハーレムの中心にいる蒼眞も同様で、会話に集中できずに空返事をしているみたいだ。
教室の後ろの扉が一瞬光に包まれたかのような錯覚に陥っていると、そこから姿を現したのは
さらさらとした黒髪のショートボブに可愛らしい顔立ち。小柄でありながらも女性らしいシルエット。
入学してからの1年と2ヶ月で彼女に告白し、玉砕した人数はひとクラス分をゆうに超えたとか超えないとか。
そんな心は一番奥の席に座っている俺と目が合うとにっこりと微笑み、
「おはようございます斗真くん」
と真っ先に俺、
突き刺さるクラスメイトからの視線を受けながら、右手を少し上げて応えると、不満げに頬を膨らませながらスススっと俺の元に寄ってきた。
「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す、斗真くん。朝の挨拶は大事だと思いますよ?」
美少女の目の笑ってない笑顔。あまりの迫力に途中で挨拶しかけたクラスメイトは口をつぐんだ。
「えっ? ああ。でもさっき挨拶したからもういいだろ?」
周りに聞こえないように小声で反論。
「ふふっ。それをオープンにしてもいいのなら私も納得してあげますよ?」
スッと顔を寄せて耳元で甘い声で囁かれると、背中がゾワゾワっとする。
「オープンにするのは勘弁。でも事実があるんだからいいだろ?」
「その事実は私と斗真くんとの2人だけの秘密ですよね? みんなは知らないんですから挨拶しないのはおかしいと思いませんか?」
討論をしてもこいつには勝てない。それでも同じ相手に何度も挨拶するのもなんか違う。
「よう心、おはようさん。なんか不満そうな顔してるけど斗真がなんかやらかしたのか?」
「湊くん、おはよう。普通に朝の挨拶をしていただけよ。ね、斗真くん?」
蒼眞から見えないような角度で意味ありげにウインクをして返事を促してくる彼女。
「あ、ああ。俺のあいさつがお気に召さなかったみたいだ。おはようございます小倉さん。今日もいい天気ですね」
座ったまま頭を水平まで下げてあいさつすると、目の前から不機嫌なオーラが漂ってくる。
「なあに斗真。また心に何かしたの?」
ため息混じりの朱莉の声で不機嫌なオーラが一層濃くなる。
「あははは。そーとーまっちはここっちのストライクゾーンを真っ直ぐいくからね」
訳の分からない舞青の言葉で不機嫌だったオーラが揺らぎ、
「ほんと、世話の焼ける人ですね」
翠の呆れて声で不機嫌だったオーラが霧散する。
「ホントに斗真くんは世話が焼けるよね」
心が俺の前に立ち同調するかのように相槌をうつ。
「だから、しっかりとお世話する人が必要ですよね? 斗真くん?」
くるりと回り顔を覗きこんでくる彼女の意味深な言葉。
俺は愛想笑いを浮かべて誤魔化すしかなかった。
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