園長の呟き②

 そろそろ成果が少しずつ見えて来ているらしい。

 ウチは元々変異種を育てた者もいないため違いが分からないが、業者の方は目に見えての大きい変化は感じないが、確実に今までより生存率や不調ではない期間が増えて来ているという報告が上がってくる。

 たぶんまだ餌の分量や種類をなど模索して試行錯誤している最中なのだろう。

 魔素の多い物を食べさせ過ぎると凶暴化してしまうかもしれないという思いがあるから。

 と言っても、確立された訳ではなく、あくまでも推論によるものなのだが、魔素が多く魔性植物が多い地域ほど、魔物や魔獣が凶魔化しているからだ。

 せっかく有用になると愛情を込めて育てた変異種が、凶魔化して魔物や魔獣のように強くなって暴れられたら困る、というより悲しいからだ。

 この前魔性植物の見本を取りに来た貸馬屋は

「凶魔化が恐ろしくて満足するまでは食べさせていませんが、それでも臥せっている時間も確実に減ったし、臥せっている時の苦し気な様子も短くなった気がします。

 せっかく産まれた子達が1頭でも多く育ってくれる可能性が出て僥倖ですね」

 と嬉しそうに笑っていた。

 交配した魔物や魔獣によっては丈夫になるし、賢い馬とだとある程度御すのが容易になるが、弱い魔物だと野性本能が強く出やすく、バランスが難しいらしい。

 その点、変異種がリーダーだと上手く行くため、酪農家や動物を使役する業者には重宝される。

 今回のプロジェクトで大量の廃棄果実が生かされ、新たにプロジェクトメンバー限定だが鉢植えやプランター植えの苗木が出荷されることが決まり、一部の本業のプロジェクトの予算の目処が付いた。反面、新たな変異種に関する本部ウエへ報告出来ない、趣味とも呼ぶような非公式のプロジェクトが次々と発足しているのが頭が痛い。

 発見次第、既存のプロジェクトがないか、統合出来そうか副園長と協議し、減らしているのだが、思い付きで作っているのでは?と疑いたくなるようなものがとにかく多い。

 ここは時間を作って変異種の当園の育成計画会議を開いた方がいい気がする。

 もちろんイレギュラーだから無給だ。

 この案に副園長も賛成した。

 私達の本来の業務に大いに支障があるからだ。

 大枠の方針や方向性などを今の内に決めておかないと、暴走した奴を止めれなくなる。

 それとは別に、この前の育成会議にも言われていたが、何処から情報が漏れたのか、近隣の住民から変異種の引き取りに関する相談が来ている。

 冒険ギルドが窓口のはずなのだが、相談される種類が愛玩目的がメインの小型動物系だからなのは、植物園ウチにいる子達のことを知られているとしか思えないのだが。

 とりあえず今のところは全て冒険者ギルドへ振っているが、たらい回しでこちらに戻って来ないところを見ると大丈夫なのだろう。

 というか、本当に該当の変異種がいるのなら、最終的にこちらに打診が来ても良さそうな案件だと思うと、もしかしたら情報を聞き出すために町民を偽った奴らが来ていたのか?

 もしそうなら冒険者ギルドに振って正解だったかもしれない。

 今度#オーガスティン__冒険者ギルド長__#に確認しておかないと。

 次いでに愛玩小型動物系の情報もないか聞かなければ!

 一部の職員アイツらがそろそろ新しい動物を求めて動き出す前に、情報だけでも集めておかなければ!

 本来の業務だけでもウンザリしているのに、積年の問題の解決する前に本部が定期監査以外に来ないようにするのはどうしたら良いのか、考えただけでも胃痛がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る