(四)-4

 1DKの部屋に入ると、ダイニングを兼用したリビングダイニングソファと低めのテーブル、そしてテレビがあった。寝室には部屋をほとんど独占するほどの大きなベッドが置かれていた。家具類は多くなく、生活する痕跡もほとんどなかった。

「もともと愛人と会うために買ったマンションだったんだが、そいつと別れてね。君が使うがいい。ただ……」

「ただ……?」

「俺も時々使わせて欲しい」

「それはもちろん……。あなたのものですし」

「いや、そうではなくて……」

 仕事では的確な指示を出す反町部長であったが、歯切れが悪かった。自分が使うことで何か問題があるのか。

 反町部長は彩香ではなく、目線を別の方へ移し、頭を掻いていた。

「ときどきでいいんだ。……君自身を使わせて欲しい」


(続く)

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