(四)-3

「あの件のことですけど……」

 彩香は切り出した。

「お世話になって、いいですか」

 彩香は横目で自分の席に座る反町部長をチラッと見た。特に表情を変えたりはしなかったが、十秒程考えてから、上着のポケットからキーホルダーを取り出すと、その中から一本を外し「桜木」と言った。

 彩香が反町の方を向くと、反町は「いいとも」と言って鍵を投げて寄越した。

彩香は慌ててそれをキャッチした。


 退勤後、反町部長に連れられて、彩香は彼の所有するマンションまでやってきた。


(続く)

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