(二)-16
夫は呆然とする彩香の脇を通り過ぎると、リビングを出て足音を立てて廊下を歩いて行き、寝室へ入った。そして音を立ててドアを閉めた。
彩香はしまったと思った。しかし、主役の抜けた宴会の現場に残された、飲み干された三本の缶と、夫とともに出勤していたワイシャツとスーツの上下がゲラゲラと高笑いするかのように宴会を続けているのを見ると、その思いも一瞬で消え去った。
「もうっ!」
彩香は大声を上げずにはいられなかった。
(続く)
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