(二)-15

 そんな小さな宴が行われているところを目にして、その日の彩香の仕事の疲れは、ラリアットで殴り倒す程の怒りの感情により、遙か遠く地平線の彼方へと吹き飛ばされることになった。

 彩香はそのとき何と言ったかは正確には覚えてはいないが、少なくとも、夫の非を狂ったように鳴らしたことは明らかだった。

「俺も今帰ってきたんだよ! 文句言うなよ!」

 そう怒鳴りながら立ち上がり、彩香の方へ向かってきた隆利に、彩香は肩を小突かれた。そして初めて自分が大凡おおよそどのような趣旨の言葉を口にしたのか、察した。


(続く)

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