(二)-10

 翌朝、彩香は夫の隆利にこのことを伝えたが、夫は興味も感心も示さず、「それはお前の仕事だろ」とだけ返事してきた。

 その後、全身の血流が良くなったような状態で、彩香は朝のラッシュの電車に乗り、出勤した。


「来週?! 話にならんな。もっと早くなんとかできないのか」「例の件は終わったか?」「まだなのか? しっかりしろ」「お前、前の部署に戻りたいのか」

 そういった反町部長の圧の強い業務命令に、前日までは元気よく「はい」や「頑張ります」と答えていたが、この日は「すみません」「すぐに」などと返事のトーンが落ちてきているのがわかった。それは反町部長にも見抜かれてしまっているだろう。


(続く)

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