(二)

 異動の辞令が下りたその日の夜、彩香は自宅のベッドの上で裸で仰向けになっていた。

「ねえ、ちょっと、ゴム付けてって言ってるでしょ」

 夫である高島隆利のが迫ってくるとき、買って枕元に置いておいたスキンの箱を掴みながらそう言った。

 隆利はそれを聞くと「あっそう」とだけ呟き、彩香に背を向けてベッドに横たわり、掛け布団を被って寝てしまった。

 隆利は子どもを欲しがっていた。しかし、彩香は仕事を続けたかった。だから夫の隆利とセックスするときにはいつもコンドームを使って避妊をしていた。夫はそれが気にくわないようだった。夫とのこうした行為も、約一年ぶりだったにもかかわらずだ。


(続く)

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