第7話:カオス。

「ザクロのバカめが・・・小娘風情に簡単にやられおって」


再び上空へ飛び上がったミンクは上からストロベリーのUFO に向かって挑発した。


「出てきなさいストロベリーさん、次はあたなですよ」


「やかましいわ・・・バカミンク」


「バカバカ言わないでくれませんか、バカストロベリーさん」


「やかましい、クソミンク」


「人のことをバカとかクソとか・・・許しませんよ」


「バカだからバカで、クソだから・・・」


「私が行こう・・・」


そう言ってUFOから顔をのぞかせたのは緋色の傭兵「カオス」だった。

カオスはUFOの金属の外壁をなんなく通り抜けて船外へ出た。


「そこの女・・・私がお相手しよう」


「どなた?・・・新顔さんですか?」


「私の名はカオス・・・」


「カオス?・・・知りませんね」

「私が知らないくらいだから、あなたたいしたことないんでしょう?」


するとカオスが言った。


「たった今から私の名前はおまえにとって一生忘れ得ぬ名前になるだろう」


そう言うとカオスは、いきなりミンクに向かって飛んできた。

ふいをつかれたミンクはカオスの繰り出したパンチを避けきれずまともに

食らってビルのガラス窓まで吹っ飛ばされた。

ビルの窓は砕け散って、建物にデカい穴が開いた。


「いった〜・・・」


吹っ飛ばされたミンクは、ムクムクと起き上がった。


「あなたカオスさんって言いました?・・・いきなり卑怯ですよ」


「ほう、私の攻撃を食らって生きてるとはな・・・」


「このくらいじゃ、私は倒せません」


そこからミンクとカオスのバトルが始まった。

目にも留まらぬ攻防・・・たぶん下からその光景を見てた人は、ふたりの動きが

速すぎて、なにも見えなかっただろう。

ただぶつかり合う音だけが周りに響いていた。


もちろんハジメにも、今ミンクがどうなってるのか分からなかった。


「なんかめちゃ強うそうなヤツが出てきたけど、大丈夫かな、ミンク」


今のところミンクとカオスのチカラは互角のようだった。

パンチやキックを繰り出しても勝負がつかない、拉致があかない状態だった。


「おまえ、なかなかやるな小娘」


「カオス・・・あなたもね・・・」


「このままの状態で戦っても終わりそうにないな・・・」

「では、そろそろ私の本当の姿を見せるとしよう」


「出し惜しみしてたわけですか?、わ〜もったいつけて・・・」


ミンクの言葉を無視してカオスは、気合を入れると一声咆哮を上げた。


「グウォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」


カオスは見る間の体が大きくなって、めいっぱいなマッチョになった。

緋色の肉体は見るからにギリシャ彫刻のように芸術的だった。

そして頭から前に向かって二本の角がニョキニョキ生えてきた。

顔も悪魔の形相・・・真っ黒い目玉は不気味に光っていた。


「わお〜、そんなことできちゃうんですね」


「パワーアップさせてもらった」


「めっちゃ強うそうじゃないですか・・・おしっこチビっちゃいそう」


「さあ、仕切り直しだ、小娘」


「楽しくなって来たじゃないですか?」

「小娘じゃなくてミンクって名前あるんですよ、覚えておいてくださいねカオス」


「行くぞ、ミンク」


そう言うとカオスは瞬時に消えた。


あまりのカオスの動きが早いためミンクにはカオスが見えなかった。

次々繰り出す攻撃にミンクはなすすべなく、ボコボコにされて

極め付きの一発を食らって地上のコンクリートまで飛ばされて土中にめり込んだ。


すごい勢いで落ちてきたミンクを見てハジメが飛び出してきた。

ハジメはコンクリートに開いた穴を除くと大きな声で叫んだ。


「ミ・ミンク〜・・・大丈夫か〜?・・・」


(なにが起きてるのか分かんないけど、死んじゃったりしてないよな)


すると穴から、ずず汚れたミンクが出てきた。

着てる服は案外丈夫にできてるんだろう、破けたり穴が開いたりはしてなかった。

それに、あれだけボコボコにされたのにミンクは平気な顔をしていた。


「ミンク?大丈夫?」


「大丈夫です・・・ちょっとびっくりしましたけどね」

「まだ終わってませんから・・・ハジメさんは被害が及ばないところに隠れてて

ください」


「私が勝ってもハジメさんに怪我されたら負けちゃったことと同じですからね」

「じゃ〜行って来ます・・・絶対勝ちますから、安心してください」


俺の彼女はなんて強くてたくましいんだ、ってハジメは思った。


「君になら尻にしかれてもいいよ」

「絶対勝って俺のところに帰ってきてくれよな、ミンク」


つづく。


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