ある朝いきなり超人に? それでも太郎は普通の中学生活を送りたい

トオル.T

序 その1

 マシンは猛スピードで進んでいた。

 その中で、二人の男女は明らかにお互いしか見ていなかった。とくに男の態度はあからさまだった。

「ねえ、これちょっとスピード出しすぎじゃない?」

「大丈夫だって。こんなド田舎で捕まるようなヘマするわけないだろう」

ふと気づいた女は心配する素振りを見せるが、男は意に介さない。

「で、でも事故でも起こしちゃったらまずいでしょ」

「起こすかよ。誰が運転してると思ってんだ?」 余裕を強調したいのか、男はむしろ女のほうへ覆い被さろうとし、女は男の遠慮のない動きに我知らず身じろぎして抵抗した。それが徒となった。女の手に弾かれた男の腕が、意図せぬマシンコントロールの乱れを誘う。

「わ、何する……!」

「え、ちょっと! 正面!」

進路が大きく変わったことに気づいたのは、女が先だった。

「正面? うわ、やばい! 制動装置ブレーキ!」

すさまじい減速Gが二人を襲った。が、それでも間に合わない。

「きゃあああああ!」

「うわあああああ!」

衝突は、回避できなかった。


 その夜、誰も見ていない河原に、星がひとつ流れた。

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