黄色いハンカチの行方

遠征の疲れもあり、あの後はひどく疲れてすっかり休日を昼間で睡眠という快楽で満たしていた。

とかく、この日本でも野球は強い国なので、自分のピッチングを振り返ることもなく、きっと自分は世界にも通用するというのが単なる決めつけだったのだ。今はわからなかった。実際はプロになれない天才も多くいる。俺は未だに才能ばかり見て、その他にあるとても面白い努力の賜物や本当の才能が開く花のつぼみのような瞬間に期待などしなかった。

おきてしばらくそのことを頭の内で考えていた。

すると携帯がなった。

「あ、もしもし?」

「門倉君!」

「詩織、どうしたの?」

「門倉にあげたさ〜、あのお菓子どうだった?」

詩織というのは同級生だが、こないだ手土産をもらったのだった。

「あー美味しかったよ。」

「何その適当な反応。」

「練習頑張ってね。」

「おう。」

ぎこちない学園生活だと思いながらも、そのやり取りを後にした。


次の日、日曜日のこと。

朝からランニングをしていると、とある別の高校の服の人がいた。

あれ、どこだっけ?

たしかこの街からもっと行った奥のほうの高校…。

「すいません、お兄さん」

突然びっくりした。話しかけられたのもそうだが、お兄さんって言われて人違いかと思った。

「あの、こないだ見に来たんです。ピッチング。」

「そうなんだ、ありがとう。」

「すごいですね、あのピッチング、びっくりしました。あんな早いストレート見てたらプロに行くのかなぁって思って。」

「ありがとー。でも、まだわからないことも多いんだよね。」

「そうですか。今日はこれで失礼します。これ受け取って下さい。」

「青いハンカチ。」

「またね。」

そう言うと帰っていった。

あれは何だったんだ。少し気を取られていたが自分で気に病むことでもないので、あまり考えないようにしていたが、ハスキーな声とハニーな顔姿にすっかり印象づいてしまった。

それから、川嶋がやってきた。

あいつは1年のときから一緒だったけど、なぜか不思議とチームから浮いている自分を心配そうに見つめていて、チームの中でも特異で、一定の距離感を保っていた。うるさいのは仕方ないが、野次は嫌だったのだ。二人共。

「川嶋…。」

「お前大丈夫か。無理しなくてもいいんだぞ。練習。…まあでも、お前頑張ってるよな!お前昨日のはたまげた。今度は俺が打ってみるか?まぁいい。今日は休もうぜ。」

「川嶋…。また後で会おう。」

「なした、そのハンカチ。」

「いいや、これはその〜。」

ハンカチがなぜだか青いのに光っていた。まるでなにか全てがもどかしくて新鮮味のないこの日常から唯一救い出してくれるような気がした。

この形のない色合いも、形のない景色も、不思議と綺麗にも見えたんだ。



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