クリスマスイブの奇跡

杜氏

12/24

 12月24日。クリスマスイブ。この日には『奇跡』が起きると言われている。何故そんなふうに言われているのか、真相は誰も知らない。しかし、一つだけ言えるのは、この日には幸せを得る人が数多く現れる。だからこそ、この日の『奇跡』は『幸せ』を指していると言われている。だが、実際はどうなのか。体験しないとわからないだろう…


『好きな人おるんw?』

 クリスマスイブ。無論今年もクリぼっちな僕は唯一無二の仲間であり、僕が好意を寄せている女友達とチャットをしていたとき、突如そんな言葉が送られた。このあとすぐに『貴女が好きです』なんて言う勇気は流石に僕にはないので、お茶を濁すことにした

『ww

逆にいると思うw?』

 僕は軽口混じりにこう返した。すると

『逆に君のことだからいるんじゃないw?』

 今度はそう返された。こう言われたらわざわざ否定する必要もないだろうし、

『正解w

実は好きな人いるんよw』

 そう送ると、本当に意外だったようで、

『マジでw?

え、それって誰なんw?』

 そう聞かれた。まだ僕には勇気がなかったが、聖夜の影響か、ただの深夜テンションなのか、この話がとても楽しく思えてきた

『ww

言っていいのかなこれw?

あんまり言わないほうがいい気がするんやけどw?』

『そんなこと言われたら余計気になるじゃんw

教えてやw』

 僕の好きな人が自分だとは夢にも思っていない彼女はノリノリで詰めてきていた。そして、僕も回らない頭でとりあえず会話する

『いや〜w

あーでもなぁw

あ、逆にそっちはどうなんw?』

 回らない頭をどうにか駆使し、カウンターをするかのようにそう聞くと

『私かw

じゃあ、私に好きな人いると思うw?』

『いそうw』

『実は…

私にもわからないw』

『なんだよそれw』

『いるにはいるけど好きかどうかわからんってやつw』

『あーねw

わからんでもないw』

『でしょw

それで、結局誰が好きなんw?』

 そろそろ完全に深夜テンションになってしまったので、僕はここである提案をした

『あーじゃあさw、もうそろそろ日付変わるからそのタイミングで言うわw』

『いいねそれw

じゃあそうしよw』

 二人して頭が回ってないのでその提案が通ってしまう。後でめちゃくちゃ悶そうな話をしていたが、そんなことを考える余裕もなく、そのまま、日付が変わった。そしてーー


『大好きです』


 僕はそのワードを、ついに彼女へ送った。すると一、二分経ってから

『えw?

どゆこと?』

 そんな風に返された。ただ、言ってしまった言葉は取り消せない。だから、僕は少しばかり冷静になりつつある頭をフル回転させ、返信した

『んw?

言葉のまんまやで?』

 頭をフル回転させた結果、これが限界だった。送った直後に何言ってんだこいつと思えるような発言をしてしまったことと、単純な恥ずかしさで声を殺して叫んでいた。段々と深夜テンションという名の麻薬が尽きかけていた時

『ガチで言ってるw?』

 そう言われた。いや、うん。そりゃそうだよな。流石についさっきまで一緒にふざけて笑ってた人から言われたらそうなるよな。などと考えながら、どうにか返信する

『ガチじゃなきゃ流石に言わんよw

ほんとは対面で言いたかったしw』

 自分で返信を考えて送ったはずなのに送った直後に恥ずかしくなるのは本当になんでなのだろうか。などと考えていると

『今から、通話ってできる?』

 予想の斜め上を行く返信がきたが、とりあえずすぐに返信した

『できるけど』

『じゃあしよ』

 その直後、自分のスマホから着信音がなる。そして、その電話に出ると

『やっほー』

 その声にすら思わずドキッとしてしまったが、平静を装って返答しようとする

「や、やっほー」

 無理だった。めっちゃ声裏返った

『ふふっw流石に緊張しすぎでしょw』

「悪かったな!緊張しすぎてw」

 こうやって笑ってくれたおかげで少しは気が楽になったので、そのまま彼女に疑問を投げる

「というかなんで突然電話しようとしたんだ?」

『え?対面で告白してもらおうと思って』

「ふぁっ!?」

 驚きすぎて変な声が出たが、僕は震える声で聞き返す

「え〜と、今ここでもう一回告白しろと?」

『ビデオ通話じゃダメ?』

「僕が死ぬぞ?」

『大丈夫。私も一緒に死ぬからw』

「あんたも恥ずかしいんかいw」

『そりゃそうでしょw告白なんてされたことないんだしw』

 そんなふうに軽口を叩いていると少しずつ恥ずかしさが抜けていき、

「まあ、流石にビデオ通話じゃ無理だけど、こうやってなら言えると思う、よ?」

『なんでちょっと疑問系なのかなw?』

「うるせぇw」

『まあ対面は次会った時にでもやってもらうとして、』

「おいなんか不穏な言葉が聞こえた気がするんだけど?」

『気のせい気のせいwそんなことより、ほら。言ってよw?』

「絶対からかってんだろお前w」

 はぁ、と、ため息を吐いた後、一度深呼吸をして僕は決意を固め

「だいーー」

『早くーー』

 ……。

「いや気まずいって!」

『www

ごめんごめんwあまりにも言ってくれないから急かしちゃったねw』

 再度ため息。そして一一

「もう許してくれ」

『うぉい!ちゃんと言ってよw』

「恥ずかしさで死にそうなんだよこっちはw!」

『私もだよ!wこっちだって恥ずかしいの!w』

「じゃあもう良くないw?これ言ったらこのあと絶対悶えるよw?」

『じゃあ言ってくれるまで対面しても話さないよw!?』

「それはやめてくれw精神的に死ぬw」

『じゃあ言えw!』

 そこまで言われると、こっちも言わざるを得なくなる。だから、僕は一度深呼吸をして

「大好きです。ほらこれで一一」

『私もだよ』

「……はい?」

『私も…好きだから…オーケーって…ことで』

「………」

 完全に思考が停止した。頭の中が真っ白のまま、ぽかんとしていると

『うぉい黙るなw!私のほうが色々と恥ずかしいこといってんだぞw!?』

「…いや、ちょっと何が起きてるかわからんくなった。え?どういうこと?」

『だーかーらー、そっちの告白を、私はオーケーしたの!』

「…え、まじで!?」

『まじだよw!逆に断られたかったのw?』

「いや、そういうわけじゃないけど、断られると思ってた」

『断るわけ無いじゃんw』

 今でもまだ真っ白な頭を回し、処理をするが…

「なんか、全然実感がわかねえなw」

『それはこっちもw』

 完全に使い物にならない頭を使って、僕は、一つ提案した

「とりあえず、今日は寝ようw!」

『だねw!この先の話はまた明日にでもしようかw』

「そうしよう」

 などと予定を軽く決め、

「それじゃ、おやすみ〜w」

『おやすみ〜w』

 そして通話は切れる。その後チャット欄に互いに気に入ってるスタンプが送られ、僕も同じくそのスタンプを返し、そのまま僕はベッドに駆け上がり目を瞑る。しかし、さっきの会話のインパクトが強すぎたせいで、結局寝たのは、朝日が見えた頃だった…。ただ、寝る直前に一つ、思ったことがあった。


 ーークリスマスイブの奇跡は、実在した

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