前世で私が死んだ時

高層ビル。

車群。

横断歩道。

視界に入る植物は、歩道脇の花壇と等間隔に植えられた街路樹だけだった。

けれど、私はこの世界を知っている。


色が変わったばかりの横断歩道の前に立つ私の横に小学生の女の子が並んだ。

その体に対してまだ大きな新品のラベンダー色のランドセル。新一年生だろうな、可愛いな。それにしてもいろんな色があるよなーなんて思って横目に見ていると、鞄の中からスマホの着信音がした。

左肩に掛けた鞄の内ポケットからスマホを出して、メッセージを確認した。


「もうすぐ着くよ」

という瑠伽からのメッセージに少し微笑んで返信を打つ。


お揃いの塾鞄を背負った小学生たちがふざけ合いながら背後を通る。


「キャッ」。


私の隣に立っていた少女が押され、前かがみに転んだのが視界の片隅に見えた。

危ないッ!

咄嗟に手を伸ばして、四つん這いになりかけた女の子の腕を勢いよく引っ張った。


女の子が私の後方に引っ張れたけれど、勢い余った私は車道に飛び出してしまった。


自動車の信号が黄色から赤に変わる瞬間で、信号が変わる前と思ったのか、一台のトラックがスピードを上げて無理やり突っ込んできた。


そして、私の体は宙を舞ったーーーーーー。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る