第37話 大丈夫……見つからないはず……
物陰に隠れて気配を消す。乱れた呼吸を無理やり押さえつけて、俺は物音1つ鳴らさないように神経を集中させた。
汗が一滴落ちる。心臓の音がうるさい。そんな小さな音すらも響いてしまいそうなくらいの静寂と、恐怖だった。
「どこに隠れたのかしら?」やつの足音が響いてくる。「どこに隠れてもムダよ。あなたの隠れそうなところくらいわかってるの。必ず見つけ出して……燃やしてあげる」
足音が近づいてくる。
どうする? 隠れるのはやめて、一気に逃げ出すか? いや、機動力で勝てるはずがない。戦っても勝機はない。ならば……このまま見つからないことを祈るしか選択肢がない。
口を抑えて、恐怖を耐え忍ぶ。全身が汗だくだった。まばたき1つできないような緊張感だった。胃がひっくり返りそうで、震えが止まらなかった。
見つかったら終わりだ。神様……どうか、どうかお慈悲を……
「あら」足音が近くで止まった。「こんな場所にいたのね……」
見つかった……? いや、ハッタリかもしれない。そう言って俺が飛び出すのを待っているのかもしれない。
すぐ近くにやつがいる。それしかわからない。
やがてゆっくりと、やつが言った。
「ようやく見つけたわ。うまく隠れていたものね……エロ本」
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