「ちくしょう……！」俺は思わず壁を殴りつけた。「どうしてだ……！　どうして犯人がわからない……早く事件を解決しないと、被害者は増える一方だ……！」

「お、落ち着いて……大丈夫よ。きっとあなたなら大丈夫」

　励ましてくれるのはありがたいが、自分の無力さは自分が一番良くわかっている。

　俺が事件をさっさと解決していれば、被害者は増えなかった。これからも増やさないことができる。

　早く……早く解決しなければ。焦れば焦るほど、俺は犯人の手のひらの上で踊ってしまう。

　なんとかしなければ……なんとかしなければ……

　焦る俺に、彼女が言った。

「大丈夫よ……まだ前編」

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