第27話 そんな期待されても困ります

「もう終わりだよ。これ以上はなにもない。期待してもらって悪いが……俺の話はこれで終わりだ」


 俺の旅の話を興味津々に聞いていた子供が、


「そんなぁ……もう終わりなの? もっと旅のお話を聞かせてよ」

「もうなにもないよ」

「……からの?」だから呼び捨てにするな。「本当はまだあるんでしょ?」

「ねぇよ」


 本当はある。だが、子供に話せるようなマイルドな話は持ち合わせていない。


「もっと話してよ……あなたのお話、楽しいんだよ。からの?」

「……子供はさっさと寝ろよ」

「からの?ぉ……」

「……うるうるした目で名前を呼ぶな……」

「……からの?……」


 ……こいつ……自分がかわいいことを自覚してやがる。


 しかし、そんな誘惑には負けない。


「悪いが、本当に終わりだよ。これ以上はなにもない。お前がしつこく聞いてくるなら……出国を早めることになる」

「……わかったよ……」子供はすねたように頬を膨らませて、「いいもん。僕は……自分で旅をして、あなたよりもすごい体験をするんだもん。からの?」

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