第4話 間違っていたらゴメンなさい、くらいの気持ちで使っています

「おお……間違いない。長年の研究の成果が実を結んだんだ! 知らんけど!」


 先輩の言葉に、研究員知らんけどは涙を流して喜んだ。


「ついに……ついにやったんですね、僕たち」

「ああ。この新しいワクチンがあれば、多くの苦しむ人々を救うことができるだろう」先輩は知らんけどの肩を叩いて、「きっとお前の名前がつくぜ。知らんけどワクチンだ! 知らんけど!」

「知らんけどワクチン……」なんて甘美な響きだろう、と知らんけどはその言葉を繰り返した。「長かった……」

「お前の妹さんの無念も晴らせるってわけだ。知らんけど」


 妹の無念が……少しは晴らせただろうか。もっと早くこのワクチンが完成していれば、あいつは死ぬことはなかっただろうに。そう思ってしまう知らんけど。


「とにかく、さっさとこいつを発表しちまおう知らんけど! きっと大騒ぎになるぜ、知らんけど!」

「あんまり名前を連呼しないでくださいよ……」


 ちょっと恥ずかしいと思ってしまう知らんけどだった。


「いいや、何度でも言うぜ。この世界を救った英雄の名前だ、知らんけど! 知らんけど! 知らんけど!」

「……」


 たしかにいい名前だ、と知らんけどは思う。


「名付けてくれた両親に感謝します。僕はこの名前を……誇りに思いますよ。知らんけど」

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