この日々にさよならを。

ねこしぐれ

第0話 深夜の悲鳴(2025/01/03改稿)

 空気が冷たい丑三つ時のことだ。

 晴れ渡った夜空に星が輝いているが、月は浮かんでいない。

 人々が寝静まり雑音がしない静寂の中に悲鳴が響いた。


「うああぁぁっ!!」


 小太りの男が足をもたつかせながら、細い路地を駆けていく。

 僕はそれを、入り組んだ道をジグザグに走りながら追いかける。

 先回りして前に立ちはだかった。


「ひいっ! や、やめてくれ!」


 男は街灯のそばで足を止めると、両手を広げて前に突き出す。

 顔面蒼白で激しく震えながら、一歩ずつ後ずさった。


「死にたくない! 死にたくない!」


 男はブルブルと首を横に振る。

 目玉が零れ落ちそうなほど目を見開いて、顔をひきつらせている。

 僕は刀をかまえ、男の首に狙いを定めた。


 右足で地面を蹴る。

 男との間合いをつめて、ザッと首を斬った。

 傷口から血が噴水のごとく噴き出す。

 男は一瞬の出来事に声を上げることもできず、アスファルトの冷たい地面に倒れて動かなくなった。

 僕は刀の血を振り落として、鞘に納める。


「……処理しといて」

「かしこまりました。朱雀すざく様」


 背後に現れた少女にたったそれだけ声をかけて、その場から離れた。


 ◆◆◆


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