第3話 探知

「…エミ、ちょっと待っててっ。」


突然、僕の手を掴み、エミから見えないよう木の反対側に連れ込もうとするマイ。


「なっ!?」


当然ついてこようとするエミだが、既に抗うことを諦めた僕は空いてる手でエミを制する。ダンジョンの中だし、仲間もいることだし、精々いったとしてもキス程度で終わるだろうと思ったので軽い気持ちで声をかける。


「すぐ済むだろうから、ちょっとだけ待っててくれ。」


「ん?お前たち知り合いなのか?」


「うーん、まぁそんなとこだ。」


言ってる間に、結構な大木の裏側に連れ込まれる。


「ごめんね、ちょっと前からざわざわしてたんだけど、探知使った後から居ても立っても居られなくなって…。」


まさか僕が森に入って彼女たちとの距離が近づいて、探知使ったところで完全に僕の存在を認識して、実際に会っちゃったらいつもの型通りって感じですか?

えー、そうなると本格的に僕が何か出してることになると思うんだけど本当にそんなことあるの?


「…キミのせいだぞ。」


僕の頭を引き寄せて耳元でそっとささやいた後、ぷっくりした唇を重ねてくる。

いやいや、僕は悪くない、無罪です、とは思いながらも堪能することは忘れないが、ダンジョンの中なので周囲への警戒も怠らない。


「…もっと…もっとして…。」


僕の手を自分の胸に導く彼女。

ダンジョンの中でこの先を望むとは、大胆不敵にもほどがある。


「…大丈夫、私も探知スキルで確認してるから…、だから、ね…して。」


背を向けて、僕の両手を彼女の両胸と両手で挟み込み、首を捻って僕の唇を求めてくる。

修道士クレリック特有のローブを着ているので体つきが傍目には判り難かったが、掌を通して伝わってくる果実の大きさと柔らかさ、そして弾力のなんと見事なこと、これはまるでフワフワモチモチの永久機関やー、ってそんなこと考えてる場合かっ。

魔物は大丈夫だとしても、もう一人この場にいることを忘れてませんか。

だが、そんなことなど知ったことかとでも言うように更に要求してくる。


「…もっと、強くしてくれていいんだよ…あんっ。」


言われて素直にちょっと強めに揉みしだくと、あっという間に二つの蕾が硬さを増すので、それを軽く弾くと彼女から甘い吐息が漏れる。彼女の行為は激化する一方で留まることを知らない。僕の手の上から自分の胸を更に強く揉みしだき、細かく身震いして痙攣しているかのようだ。一度、激しく躰を震わせた後、恍惚とした表情で下半身を押し付けてくる。僕の右手は彼女の脚の付け根に導かれ、ローブの上から軽く擦ると熱と湿り気が僕の指に伝わる。


「…もう我慢…できない…いいよ、来て…。」


ローブを腰まで捲り上げて大樹に両手をつき、流し目を送ってくる彼女にここで終了という選択はあり得ないようだ。

そうだね、諦めたらそこで試合終了だよね。何か用法を間違ってる気がするけど、カナタいきまーす。


◇◆◇


「お待たせっ。」


「お待たせ、じゃないっ!お前たちは何をやってるんだっ!!」


頬を赤らめたエミに対してマイは何事もなかったように声をかけるので僕は恐縮する一方だ。


「あれぇ、もしかして濡れちゃったぁ?エミもしてもらう?」


「なっ、ぬ、濡れてないし、してもらいませんっ!!!」


更に火が付いたように顔全体を真っ赤にして否定する。


「まったくお前はこんな場所で人目も憚らず…こっちの身にもなってみろ。」


抑えていたとはいえ、あれだけ声や音がしてれば普通に聞こえるよね。誠にすいまめん。

しかし本当に不思議だ。

今日だけで二人も一目惚れからの一線越えるまでなんてどんな確率ですかってね。今日の二人とこれまでそうなった人たちのことを思い返しても共通することなんて何一つ思いつかない。まあ人間ってことぐらいは共通しているか。肌の色、髪の色、瞳の色、体つき、年齢、性別、何をとっても選り取り見取りの五月みどりだ。誰だそれ。


「欲求不満爆発寸前じゃないのぉ?ほれほれ。」


マイがエミに後ろから抱き付いて胸を揉み始め、これでもかと責め立てる。


「やーめーてー…あぁー、ちょ…敏感になってるからダメぇ…。」


麗しい女性二人がくんずほぐれつ始めるので後ろを向いて魔物への警戒に務める。

そこでふと気づく。探知スキルが発動したことに、だ。

ステータスウィンドウを開いて確認すると当然のように探知LV1がある。マイとのアレでいつも通り力の譲渡っぽいのを感じたけど、このスキルも譲渡されたのか?うーん判らないことがまた増えてしまった。

探知は自分を中心にスキルレベルに応じた半径内に生物がいることを認識できるスキルだ。ステータスウィンドウとは別に探知スキルのサブウィンドウが脳裏に表示されている。こんな風に見えるんだと思いつつ、光点の色の違いに気を引かれる。真ん中が自分だとして白色、すぐ近くに2つの光点があるが緑と紫だ。


「なぁ、マイ。探知スキルで表示される色の違いって何だ?」


「んー、自分が真ん中で白表示、魔物が赤、人間や動物が緑だね。人を襲うような獣だと橙もあるね。」


エミへの攻めを止めることなくマイが応えてくれる。


「紫は?」


「紫?そんなの見たことないけど…、さっき初めて見たけどカナタは青、っていうか藍色だったよ。」


尚もマイの攻めが強くなる一方のようでエミの喘ぎが止まらない。

しかし、剣士を抑え込める修道士クレリックって…マイ、恐ろしい子。

それにしても藍色は僕専用ってことはないよね。紫の表示も見たことがないってどういうことだ。よくよく位置関係を見てみるとどうやらマイが紫でエミが緑のようだ。うーん謎が深まるばかりだ。


「よーし、エミも観念したようだし、三人でしよっか。」


どうしてそうなる。

いつの間にかマイが僕の背中を押していて、エミの方へと突き飛ばされる。体勢を崩した僕は、ぐったりと動けなくなっているエミの上に倒れ込んでしまうが、なんとか覆いかぶさるように四つん這いになってこらえる。押し潰さなくて良かったと安心して立ち上がろうとすると、剣士にしてはほっそりとした腕が下から伸びてきてそっと抱きすくめられる。抱きすくめられて分かったが、エミはほっそりとした体つきではあるが、程好く柔らかくしなやかな感触が心地よい。

髪を撫で、頬を撫でて、そっと唇を重ねると柔らかくて硬いものが割り込んでくる。それを時に強く時に優しく迎えると、エミが息も絶え絶えに訴えてくる。


「…マイに…されて…もう…なの…だから…来て…。」


そこまで言われては、全身全霊でお応えするのが筋だよね。カナタ、再突入しまーす。


◇◆◇


1回ずつして満足したかと思ったが、エミは意外に二回目を所望したので快くお受けした。

合計4回は若さ溢れるお年頃とは言え、少々大変だったことをご報告いたします。

そう言えば、これもいつものことだがマイとの二回目の際には明らかに判るほどの力の流入はなく、エミとは二回とも力の流入は感じられなかった。お互いの体をこれでもかというくらい感じ合いはしたけどね。てへぺろ。

その後、しばらく一緒に魔物を狩って親睦を深めたが、エミは「紫」になることはなく「緑」のままだった。うーん、判らん。


「それじゃあ、また後で。東二十三番の大きい道具屋の隣のアルスって店だからな、間違えるなよ。」


街に戻る道中に夕飯を一緒にどうかと誘われ、特に断る理由もないので了承していた。というか、この地に来てまだ二日目の僕は彼女たちのお気に入りの店を教えてもらおうという思惑も働いたのだ。それぞれの用事を済ませたら店で落ち合うことにし、街に入って行先が別になるところで一旦二人とは別れた。


僕は今日の戦果を売り払うべくギルドに向かう。その品物を扱う店と直接取引する方が高く引き取ってもらえる可能性はあるが、ここに来て日が浅い僕にはどんな店がどこにあるかも判らないし、個別に交渉するなんて手間がかかってしょうがない。その点、ギルドであれば一応どんな品物でも扱ってくれるし、適正価格でのやり取りをしてくれるから安心で楽だ。


ふと気付くと午前中に訪れた部屋の近くを通ったので、何の気なしに「探知」を使用してみたら発見があった。建物内や通りを歩いている人は全て「緑」だが、あの部屋にいる人物だけはマイと同じ「紫」だ。

なるほど、やっと一つ謎が解けそうだと思った瞬間、探知ウィンドウにまた違う色の「青」が表示されて頭を抱える。一謎去ってまた一謎。ぶっちゃけありえない。

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