第27話 魔王城にて
――俺は、例の淫魔さんに連れてこられてこの魔王城にやってきた。
魔王城はなんて説明すればいいか分からないが、サーベラスの本拠地よりも遥かに大きくて、不気味な魔力が感じられる。城の装飾も所々見れば、何か高そうな物を使っている。しかし、たまに壁や床に俺の体が触れると、ミシミシと言っているので、だいぶ年代物らしい。
「それで、魔王さんよぉ。俺を欲しい理由を教えてくれねぇか?」
俺は今、魔王の前にいる。魔王はこの前会ったときとは別人のような風格で豪華でゴツい禍々しい椅子に偉そうに座っている。
ちなみにあの後、淫魔さんがワープゲートという、魔界と人間界を繋ぐ入口的なものを出してくれた。どうやら魔界っていうのは、人間が住んでいる場所とは程遠いらしく、このワープゲートでいつも移動しているのだそう。通りで魔王はサーベラスの警備を抜けられるわけだ。
「……まぁ今はいいけどさ、僕は君よりだいぶ偉い立場の悪魔なんだから、敬語を使ってほしいかな」
「そっちから呼び出したんだろう?」
「その呼び出しに応じたのは君だろう?」
「……まぁ、確かにそうだが」
「じゃあ、敬語を使ってもらうよ。なんせ僕は魔王。君はスカウトとはいえ、第八軍の一般兵。この身分の差を分かってもらいたいな」
理不尽だなぁと思いつつも、ここで魔王に歯向かって痛い目を見るよりかは、従順なふりをしたほうが俺のためだと思ったので、俺は片膝を床につけ、もう片方の膝を立てたまま、頭を下げてつつ腰を下げる。
「うんうん。それでこそ、僕の戦士だ」
くそが! 調子に乗りやがって。
こいつ、あの淫魔に聞けばなんと二代目魔王らしいじゃないか。しかもまだ魔王になってそこそこらしいので、もしかすると俺と年は変わらないんじゃないのか?
「魔王様。早速ではございますが、俺はここで何をすればよいのでしょうか?」
「……うーん、そうだねぇ〜。とりあえず――、」
魔王はまるで「今日の夕食はなんだろうか?」みたいな雰囲気で、手を顎に当てて、上を見る。
そして、魔王は低い声でこう命令してきた。
「―――とりあえず、国家の人達を殺すのが目的だから、今から君を中央国家の城下町に送り出す。そこで、何人か兵士を取っ捕まえて、こちらに持って来い」
「……かしこまりました」
なんと、俺の最初の任務は人間の捕獲らしい。しかも、中央国家という俺の行ったことのない場所が本日の現場とのこと。なんとも楽しそうな冒険だろうか。
だが、一つだけ心配がある。
「……私の力で、兵士達に勝てるのでしょうか?」
その心配だけがある。なぜなら俺は入隊テストにも合格できなかったし、ロイドが言うには、俺は三級兵士にも勝てないとのこと。そんな俺が中央国家という大勢力の兵士に勝てるのであろうか?
「あぁ、その点は心配無いよ。別に今すぐに行って欲しい訳じゃない。何日かはここで鍛えてもらって、そこから何人かサポートを付けて出発してもらうよ」
なるほど。ここは俺みたいな下っ端に対しても手厚い援助があるらしいな。―――あのクソッタレサーベラスとは大違いだぜ。
「じゃあ、今から勝てるように強くなればいいんですか?」
「そうだね。まずそうしないと、行ってもただの犬死にだ」
「……かしこまりました。ご厚意感謝します」
「うん。よろしい」
俺はその後、魔王の側近とやらに自室に案内された。
そこには、サーベラスの基地程とまではいかないが、それなりに整った設備があった。
ベッドや机や椅子。しかも、結構な量の本が詰まった本棚が置かれていた。なんでもそこには色々な魔法が書いてあるらしく、悪魔向けのもあるが、亜人にも覚えられるとのこと。
「はぁ〜、ここは俺みたいな底辺にも優しい世界なんだなぁ〜」
明日からは、午前中は魔法についての座学。午後からは剣術と魔法を実践的に練習するとのこと。なんと手厚いサポートだ。
だが、もう一つ。なんとも素晴らしいサービスが付いている!! それは―――、
毎晩、淫魔様より大変よろしいサービスが受けられる!!!
ここに来るときに、魔王の側近さんから言われたのだ。
「あくまで君はここのお客人だ。しかも、亜人という、我軍にとって相当な戦力になる。だから、君にふさわしいものを用意した。それを使ってしっかりと休んでくれ」
と、渡されたのはとあるボタンだ。このボタンを押すと、魔王軍の淫魔がランダムでここに召喚され、俺のお世話をしてくれるとのこと。
たまらんなぁ〜。
そう楽しみにして、俺はさっさと寝る準備に入り、ボタンを押してベッドに潜り込む。すると、
「失礼します……」
キタキタキタ!
俺は胸とあそこを膨らませ、ベッドの掛け布団からひょっこりと顔を出す。
「今日のご奉仕を担当させていただきますベルと申します。よろしくお願いします」
彼女は土下座のポーズでなんとも滑らかな声で話していた。
「……表を上げてなさい」
俺はどっかの誰かさんみたいに偉そうにその女の子に指示をする。そして、彼女はその言葉に従い、表を上げる。
「はい……」
「……は?」
―――俺は驚いた。その女の子の顔に。その女の子は肌の色は悪魔族そのものだが、顔の作りはあいつに似ていた。
「……お前、メアリーか?」
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