第17話 魔法も頑張ろうね
「まぁ、いいけど」
メアリーはイヤイヤながらも許してくれたようだ。そして肝心な団長は―――、
「…………」
未だに俺を人として見ていない目だった。確かに人間じゃないんだけど。
―――まぁいいや。とりあえず許してもらったってことにして貰おう。
「……じゃあ、聞きたいことがあるんだけどさ」
「…なぁに?」
微妙な間があったが、メアリーが返事をしてくれた。
「俺、魔法を覚えたいんだけど魔力が足りなくて使えないんだ。だから魔力を増やす方法を教えてくれないか?」
自分が亜人だとばらしても良かったんだが、一応最初は俺が人間であるていでいく。メアリーと団長は俺が亜人になったと知ってもなんとか受け入れてくれるだろうが、もし他の人が亜人だと聞くと色々と面倒なことになる。
そして、この質問にパイは返事をしてくれた。
「ふむ、魔力か。それなら教えてあげる」
教えてあげるそうだ。よかった。
ちょっと声がいつもより低かったが、団長の興味のある話題だったので何とか答えてくれた。
「ありがとうございます」
俺はこの取り戻した空気を止めないように、元気よく感謝の言葉を述べた。
その波に乗るように、団長は―――、
「じゃあ、早速本題に入ろっか」
良かった。乗ってくれた。
俺はほっとした気持ちが出ないように、
「お願いします」
「まずそもそも魔力とは何だ? という話についてからね」
「うい」
「魔力というのはほとんどの人が生まれつき持っているもので、その量はひとそれぞれだね。この魔力を使って魔法を唱えるのだけど、極められる魔法は魔力の種類によって決まるの」
「種類?」
「うん、例えば私だと光系の魔法。この分野の魔法であれば、鍛えればいくらでも学んで使うことができる。でも、光系以外の魔法は簡単な魔法しか使えないの」
「なーるほど」
彼女は少しづつテンションを上げながら説明してくれた。
「……理解できている?」
「はい。勿論です」
周りから見ると、俺の顔はいつもぼけーっとしているらしく、本当に話を聞いているか分からないらしい。
「…ちなみに君はなんの魔力の種類はなに?」
「……いや、分からない」
「じゃあ、見てあげる」
「……え?」
彼女はそういうと、俺の胸元に耳を当てて来た。その際には彼女の甘い匂いと透き通るような肌、そして絹よりもきめ細やかな素材で作られたような黒髪が迫ってきて、三つのうるさい鼓動が止まらない。
しかし、彼女は顔がほのかに赤くなっている俺を気にすることも無く耳を当て続ける。
「ん?」
「どうしました?」
「いや……、心臓の音が不規則に速く鳴っているなぁ~と思ってね」
―――――あ、やばい。
このままでは心臓の数がばれてしまう。
俺は焦った。とにかく心拍を止めようと意識するが、逆に俺は鼓動を速めてしまう。
「いやぁ~、今日はなんだか忙しい日でしたからね」
俺は焦りすぎて、適当でなんの打開策にもならない言い訳をする。
「そう? まだ朝だけど」
「あー……、そういえばそうですね」
「………」
「………」
無言の間。俺は何かを喋って、少しでも心臓の音をかき消さないといけないが、喋る内容が思いつかない。畜生。せっかく亜人の知性を手に入れたのに上手く使えない。
―――だがここで、焦る俺に救世主がやってきた。
「ねぇ、結局なんなの? アランの魔力って」
メアリーだ。
良かった。ここであのうるさい声がやっと役に立つ。今まで何度も俺を苦しませてきた騒音を生かす時が来たようだな。
「……うーん。よく分からないわね。多分、念系と私と同じ光系の魔法かな?」
ほほーん。俺は念系と光系か。光系は明かりとして役立つだろうが、念系は何に仕えるんだろう。確かあの本では、洗脳とか幻惑とか物体操作の魔法が使えるらしいがあまり戦士っぽくないな。
「へー、ちなみにそもそもどんな魔法の種類ってどんなのがあるの?」
「それは無限だね。火、水、光、闇、念、回復とか色々あるけど、ほかにも種類はあるし、魔法の組み合わせもあるから」
「ふーん。結構奥深いんだね~」
「じゃあ、俺の念系と光系は組み合わせしだいでは戦闘でバチバチに使えるような魔法も生み出せるってことですか?」
「うん。そうだね」
彼女はようやく俺の胸から耳を離し、元の位置に戻った。
「じゃあ、教えてあげようか?」
「え? 何を?」
「魔力の上昇と魔法の組み合わせだね。魔力上昇については魔法を使っていれば自然と上がるし、魔法も本とか誰かに教えてもらえばいくらでも使えるようになるよ」
いい提案だ。朝から夕方は剣術とかの体術訓練で、夜は魔法の訓練。ぎちぎちの予定になるが、別に特にやることはない。
「分かりました。ぜひ明日からよろしくお願いします」
こうして魔法の道も開かれたのであった。
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