寒空の下、人間を拾いました
サムギョプサル近藤
第1話
目の前で人がバラバラになるのを見た。
あまりにも一瞬の出来事で脳が追いつかない。周りからは悲鳴が上がり
俺はただ呆然と立ち尽くすだけ。
風に舞って服の破片かだろうか。俺の足元に落ちた。臭いが鼻につく。
辺りは血なまぐさい。
思わず吐き気を催す。
我慢できずに床に手を付いて胃の内容物を吐き出す。
吐ききった後に顔を上げて周りを見渡す。
駅員や救急隊員が忙しなく駆け回る。
アナウンスが聞こえた。
身体がしわしわ。
顔もぐちゃぐちゃになっている。
服は汚れて
ふらつきながらも立ち上がり、軽くはたいて
汚れを落とす。
脳から先ほどの映像がこびりついて離れない。
止められなかった…
違う、おれのせいじゃない
でも!!!
バッと汗だくで起きる
時計を見ると朝の4時
まだ寝ていられるじゃんか
テーブルの上には散らばった原稿用紙
その原稿用紙には万年筆が刺さっている。
ペン先が折れてしまっていないだろうか。
だなんて刺してからジワジワと後悔した。
またあの夢を見た。
ベッドの隣には下着姿の女が寝ている。
う…頭痛がする…
ズキズキする頭を抑えつつベッドから降り、
冷蔵庫を開けて、ペットボトルの水を取り出し、喉に流し込む。
そうだった…
昨日女を拾ったんだ。
ったく余計な事をしちまったもんだぜ。
終電が終わった時間にフラフラ歩きながら
タバコを咥えくゆらせ、ただぼんやりと灯りの付いた店達を眺めていると
女がいた。
酔っているのだろうか寒空の中、ぐったりしている。
しゃがみ込み声をかける。
「おい」
動かない。
死んでるのか?
頬を叩くと
小さく声をあげた。
「ン…」
「おい…大丈夫か?」
女は酔っているのだろう
両手を伸ばして俺に絡みつく
「おい…!!!」
俺は動揺しながらも細く柔らかい身体を支える。
「だーりーん!!!」
だーりーん???
彼氏の事だろうか?
「俺はだーりーんじゃねえ…」と
ハスキーボイスで柔らかく諭す。
「いーかーらーきしゅ(キス)してー」
「ったく違えって言ってんのに」
柔らかい唇を交わしながら、女を背中に回し、女の靴を片手に持ち
俺の自宅へ向かう。
この時間だからかだろう。
近隣の住人は寝ている。
玄関を片手でこじ開け、靴を脱ぎ散らかし
ベッドに女を寝かせる。
女は吐息を立ててすやすやと寝息を立てている。
「俺がヤバい奴だったらどうすんだよ…」
と自分の頭をくしゃくしゃする。
女の身体は胸が大きく、冬だというのに下着姿。綺麗に整った顔。
むっちりした太もも。
「デカメロン」とボソっと呟く。
掛け布団を上からかけてやる。
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