二章

第123話

 蝶々ちょうちょもいなくなり、俺たち二人だけの時間が静かに流れていた。


 寝っ転がって花の香りを楽しんだり、花びらが舞う風を全身で受けてみたり、ただ青空を見上げてみたり。


 花に囲まれた俺たちは、しばらくの間何もしない事を楽しんだ。


 どこまでも続く青空、一面に広がる色とりどりの花畑。


 そんな幻想的な光景の中でも……。



「……なぁルナ、腹が減った」


「えへへ、実は私も」


 腹は減る。俺たちが元気な証拠だ。


 そのまま花に囲まれて昼食を取ることにした。



「なんだか本で読んだ、お姫様みたい」


 花畑の真ん中で、ちょこんと座っているルナがそんな事を言い出した。



「そうなのか? お姫様は花畑で食事をするものなのか?」


 俺のイメージでは”お城で美味い物を腹いっぱい食べてる”そんなイメージだ。



「いつもじゃないけどね。メイドさんを連れて、白い傘をさして、ふわっとした大きなスカートをいて、優雅ゆうがに紅茶を飲むんだよ。そしてペットの仔犬がね、元気に走り回ってるの」


 両手を組んで遠くの空を見ながら楽しそうに妄想している。

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