第58話
「それが変換器の値段だな。デカいやつ、つまり性能がいいやつほど高くなる。まぁ、当然だな。そして種類によって値段が多少変わる。……どうだ、高いだろ」
目を擦りもう一度見てみる。やっぱり何度見ても高い。まぁ、今すぐには買い替える必要がないので問題はないが。
「さらに魔石も必要になるな。お前らが今使っている魔石、小さい魔石を大きい変換器に入れる事は勿論出来る。だが、引き出せる力は変わらんな、今使っている変換器と」
「変換器だけじゃなくて、魔石を買うのにも金がかかる、って事ですよね。大きい魔石ってやっぱり高いんですか? 」
「ほれ、ちゃんとそっちも用意してきたぞ。見てみろ」
もう一枚の紙を受け取る。ルナと二人で確認してみる。
普段使っている魔石があった。それが一番安く、そこから徐々に高くなっていく。でも、変換器と比べると……
「思ったよりは、高くないんですね。変換器が高かったから、もっと高いのかと思いましたけど」
「そうだな、安いのもあれば、高いのもある。いわゆるピンキリってやつだな」
「うーん」
二枚の値段表を真剣な表情で見つめるルナ。
冒険には何かと金がかかる。少しでも安くすむのなら、それに越した事はない。
「ガロッゾ先生、先生の顔で割引とか効きませんか? 」
「効きません」
「先生のおひげ似合ってますよねー。素敵だなー。私、ドキドキしちゃうなー」
「ガハハ、そりゃありがとよ」
ルナの目が「キラッ」と光る。
今だ! 両手を組んで上目づかいでお願いをするルナ。
「可愛い生徒たちの、可愛いお願いだと思って、ね」
「出来ません」
「そこを何とか、ね」
「無理だな」
「むー」
ルナの巧みな話術を躱すガロッゾ先生。うん……とりあえずこの二人は放っておこう。
ルナとガロッゾ先生の応酬が続く傍らで、俺は真面目に価格表を見つめる。
確かに高い、だが命には変えられない。いつか必要になる時が来るのかも知れない。その事は頭に入れておこう、そう思った。
「ありがとうございます、ガロッゾ先生。俺たちの事、心配してくれて」
「ガハハ、気にすんな。これが先生としての役目で、俺からの応援みたいなもんだから。ただ、値段の交渉は出来んがな」
「むー、ありがとうございますぅ」
ガロッゾ先生は手を振って、仕事に戻った。その姿を見送ってから、もう一度二人で価格表を見てみる。
「本当に高いよねー。こんなに高いのに、色んな場所に配っている協会って、凄いお金持ちだよねー」
「……そうだな。どっからそんな資金が出てくるんだろうな」
協会の悪いウワサは聞いた事が無い。それどころか良い話ししかない。
惜しみなく知識を教え、高級な変換器を配っている。さらに各地には支部があり、危険な魔物退治もやっている。
先生たちはみんな良い人だ、それは俺とルナが一番わかっている。
「冒険に出る」なんて話しを真面目に聞いてくれた。応援までしてくれた。訓練も付き合ってくれた。大量の課題も用意してくれた。……あれはちょっと、大変だったけど。
先生たちの事は心から信頼している。……だけど協会の事は、協会の中の事は知らない。
少し気になるが、気にしてもしょうがない。アレクスは頭を切り替える事にした。
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