第51話


「自分以外の人がいるって言うだけでも心強いですからね。お互いに必要な部分を支え合って下さいね」


 リリアン先生はそう言い残して去って行った。


 その後ろ姿を見送った後、アレクスは渡された紙に目を落とす。


 協会証明書。


 しっかりした材質だが、ただの紙である。風が吹けば飛ばされてしまい、火を点ければ直ぐに燃えてしまうだろう。

しかし、このただの紙が”自分が証明できない自分を証明”してくれる。そう思うと、とても重い物に感じた。



「……重いんだな」


 アレクスはボソッとささやいた。するとルナが「そうなの? 」と言い、顔を近づけて証明書をヒョイとアレクスの手から取り上げた。



「あっ、ちょ……」


「ん? 軽いじゃない。……んー、確かに手触りは良いけど、ただの紙だよね、これ? 」


 証明書をじっくり観察するルナ。指でこすって材質を確認したり、引っ張ってみたりしている。ついには何を思ったか匂いを嗅いだりもしてる。その姿を呆れた様な表情をして見てるアレクスに気づく様子もなく……


 ルナがアレクスの視線に気づいたのは数分後。目が合うとルナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。



「……これは違うんだよ、アーちゃん」


「何も言ってないぞ? 」


「だってアーちゃんが、重いって言うから。でも軽いから。ただの紙だもん、これ。でもアーちゃんが重いって言うんだから、何か秘密があるんだって。……だから違うもん」


 同じ事を繰り返すルナ。なんだか可愛そうになってきた。アレクスはルナから紙を返してもらって自分が思った事を説明する。



「物の重さの、重い軽いじゃないよ。とても大事な物なんだろうなって思ったんだよ。その想いに対するの責任が重いなって思ったのさ」


「ああ、そういう事。確かに大事な物だよね。これが無いと、仕事出来ないかもしれないんだんね」


 手をポンと打ち納得した様子のルナ。


 アレクスは「ちょっと違うんじゃないか? 」と思ったが、「うんうん、大事大事」と笑顔で頷いているルナを見ると訂正する気が無くなっていた。

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