第25話
「大丈夫か? 」
「な、何のこと。 だ、だ、大丈夫に決まっているじゃない! 」
「? ならいいけど。お湯捨ててくるよ」
アレクスは体を拭く時に使ったお湯を捨てるため、鍋を持って外に出て行った。
その姿を黙って見送ったルナは、ドアが閉まると「ふー」と大きなため息をつき、真っ赤になり熱くなってしまった顔を両手で覆った。
(う~、なんで私が恥ずかしがらなくちゃいけなのよ)
心の中で叫びながら体をクネクネさせていた。
暑くなると村の近くの川で下着姿で遊んだのは遠い昔。さすがに最近はそんな事していなかった。
赤いままの顔を見られると恥ずかしいので暖炉の前に移動する。こうすれば暖炉の火の反射でわからないだろう。
そんな事を考えてると、ドアが開きアレクスが鍋を持って入ってきた。
「また水汲んできたよ。お茶でも飲もうよ」
「うん、そうだね」
薪ストーブの方を向いたまま背中越しに返事をする。
アレクスは気にも留めるそぶりもなく鍋を再び薪ストーブに掛けて、ルナの隣に座る。
ルナはアレクスの顔をチラチラと見てみる。
どうやらルナの顔が赤くなっているのには気づいていない様子で、暖炉の火を眺めている。
その横顔を見ていると、また顔が熱くなる感じがしてきたので自分も薪ストーブの方を見る事にした。
「思っていたよりは疲れなかったな。やっぱりこいつのおかげかな? 」
アレクスは自分の腰に巻いてある変換器を撫でながら言った。
手のひらサイズの四角い形。魔石と同じ滑らかな材質。協会から各村に支給される量産品の物だ。
今日は朝早く村を出発してほとんど休まなかった。休んだのは川辺での休憩とお昼ご飯だけで、それ意外は歩き続けた。
普段から村の中で走りながら遊んでいる二人だったが、さすがに大きな荷物を背負ったまま一日歩き続けた事はなかった。
それなりに体力には自信はあったが、こればっかりはやってみないと分からないので少し心配していた。
ベルトについている変換器の横には予備の魔石を入れて置く小さなポケットが付いている。
何気なしにそこから予備の魔石を取り出して見てみる。両剣水晶という形の魔石だ。透明度は低く向こう側は見えない。
魔物の種類で形や大きさが変わるが、この魔石は一番多く出回っている。なんでも犬に似た魔物から取れるものらしく、活動範囲が一番広く数も多い事が確認されている。アレクスの村では見た事が無いが。
村に来る行商人もこの形の魔石を比較的安価で多く扱っている。なお今回の冒険ではリリアン先生「内緒ですよ」と特別に魔石をくれた。
変換器は協会から支給されるが魔石まではくれない。魔石は協会が買取市場に出している。
しばらく魔石を眺めていると、気になる事がでてきた。そのまま魔石を見ながら考えているとルナがお茶を出してくれた。
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