第11話


「だから魔石と同じ硬さの物は”魔石”だって」


「それはちょっと卑怯じゃないですか! 普通別の物だと思うでしょ! 」


「ガハハ! 想像力が足りないぞ、おまえたち。もっと柔軟に考えないとな」


 ガロッゾ先生は大笑いしている。こうやって時々意地悪な質問をしてくるのがガロッゾ先生という人物だ。真面目な授業ばっかりよりは良いが少し腹が立つ。

 

 ほっぺを膨らませ抗議の意志を表示するルナだが、気にする様子も無く授業を続けた。



「じゃあ先生の武器は魔石で出来ているですか? でも魔石って硬いから加工も無理なんじゃないんですか? 」


 へそを曲げているルナをよそにアレクスが質問をした。先生の話から魔石より硬い物があるとは思えない。でも魔石を武器にするのには何かしらの加工が必要に感じる。



「特殊な装置が必要だが加工は出来るんだ。それがある場所が”蒸気都市パキーム”ってとこなんだが……」


「リリアン先生が教えてくれました。確か変換器を作ってるとこなんでしょ」


「おお知ってたか。そこで魔石を加工出来るんだが、魔石は武器にするには向いてないんだよ」


「じゃあ魔石で攻撃出来ないじゃないですか」


「そこでこれを考えたんだ」


 机の上に二種類の木の棒らしい物取り出した。一つは弓に使う矢のようで、もう一つは柵等に使う杭みたいだ。

ガロッゾ先生はみんなに回して見せてくれた。アレクスとルナの元にも回ってきたので、よく見てみる。


 両方ともぱっと見は村で使う物と同じだ。矢と杭、両方とも木で出来ているし、大きさも硬さも普通の物だ。矢の羽の部分も鳥の物で変わった感じはしない。


 しかし、じっくりと見てみると違いがあった。矢じりの部分に小さい魔石が付いている。普通は木のままだったり鉄が付いてる部分だ。



「これで攻撃するんだよ。これなら体の中にある魔石に届くんだ」


「でも、どこに魔石があるかわからないですよね? 」


「言ったろ”心臓の変わりに魔石がある”って。魔物っていっても動物と同じ姿をしていて心臓の場所も同じだ。つまり動物の心臓の場所を知っていれば魔石の場所も分かるって事だ」



「矢は分かりますが杭はどう使うんですか? 」


 矢は弓を使って遠くの標的を攻撃する武器だ。アレクスとルナも狩りをする時には弓矢を使う。


 しかし杭を使う時は狩りではなく柵や建物等に使う物だ。これを攻撃に使うのはあまり想像出来ない。



「そうだな。弓矢は狩りに使うから知ってるだろうな。んで杭なんだが、これはな……直接打ち込むんだ」


 杭を直接体に打ち込む。想像するとかなり凄い事になっている。まるでおとぎ話に出てくる人間の血を吸う化け物の倒し方だ。

でもまぁ、確かに矢よりは強そうではある。単純に大きさが一回り以上あるから。



「でもこの方法はかなり危険だ。杭を固定させて、そこに打ち込むんだから、剣や斧で切ったりするとは違う。だからあまり使う事はないかな杭は。使うなら弓矢だな。うまく当たれば一発だしな、魔石は取れなくなっちまうけど」


 動く魔物や魔人の動きを止めて、正確に魔石の位置に杭を固定させ打ち込む。これをやるには至難の業だろう。それならば時間はかかるが他の部分を攻撃する方がよっぽど現実的だ。


 弓矢の方が遠くから撃てるのでまだ安全だろう。

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