第2話


「これが魔物発生の歴史ですね。今から数百年前と言われていますが詳細は残っていません」

 

 日の光が優しく差し込み、穏やかな風が吹く教室で先生が村の子供たちに授業をしている。生徒の数は十数人。全員が十代前半の少年、少女だ。

 先生の名前はリリアン。髪の毛が背中までありメガネをして、優しそう……といよりは、少しおっとりしている。


 リリアンは協会という組織から派遣されている巡回教師だ。

協会とは、技術・知識・戦闘・医療の四つからなる組織。


 協会の人間が各地を周り知識や技術を教え、新しい発見があったら、その知識を本部に持って帰るのだ。魔物があふれるこの世界では、互いが助け合いをしなければ生きていけない。


 そんなリリアンの声を子守歌にしてうたた寝をする子、外をぼ~と眺めている子。隣の席の子とおしゃべりに夢中になっている子もいる。

そんななか、身を乗り出すように聞いている子がいた。一番前の席に座っている子だ。

 


「何か質問はありますか? 」


「はーい、はいはい」

 

 一番前の席の男の子が元気よく手を挙げた。名前はアレクス・ノア。短髪黒髪に少し赤が入った茶色の瞳。好奇心旺盛な男の子で色んな事に興味があるようだ。


その大きな瞳をキラキラさせながら、大きな声で。


 

「今そこはどうなっているの? 魔物はなにを食べるの? 闇の中はどうなっているの? 」


 男の子は矢継ぎ早に質問をなげかけた。周り子供たちはあんまり反応しないことからいつものことのようだ。

リリアンも慣れた様子で答えた。



「アレクス君は元気ですね。まず、闇があった都市は魔人たちの住処になっています。何体もの魔人がいるようですが、そこからあんまり出ないみたいですね。次に、魔物、魔人は食事を取る必要がないと研究結果がでています。最後に、闇の中は結局わからない、というのが今の現状ですね」

 

 リリアン先生が丁寧に教えてくれた。アレクスはその答えを聞いてから、少し考えてから、また、質問をした。



「魔人のお家になっちゃったんだ。ご飯食べないなんて変だね、お腹減らないのかな? わかんないってことは、闇の中がすっごく良い所かもしれないですよね?綺麗なとこかな?もしかしたら美味しいものを、お腹いっぱい食べてるか」


 アレクスは興味津々に言ってきた。リリアンは少し困った顔をして、頬に手を当てながら、考える。

 闇の中に入った人は誰一人帰って来ていない。それは、全員死んでいるから、というのが協会の考えであり普通の考えだ。

生きていたら帰って来る。帰ってこないから死んでいる。みんな普通そう考える。


 アレクスの考え方はとても前向き、ロマンチストなようだ。



「……そうね、そうかもしれませんね。そうだと良いですね。結局わからないのですから」

 

 そんな考えをしたことが無かった、とリリアンは感心しつつ、ほほ笑みながら答えてくれた。

 その笑みは答えを知っているから、でたのだろう。 

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