第2話 獣使いの里
初めて見た景色は、無限に続くように見える荒野。
そしてどう見ても現実には存在しないだろう。大きな水晶の岩。
面食らった。
とにかく軽そうな虹色の綿毛が、風に乗って漂っている。
地面に咲くタンポポの花が、笑いながら横切っていった。
二度目して、それが夢かどうか確かめてみようとも思った。
けれど、転がっている石を手にしたときの感触が、風が頬をなでる感じが、それがまぎれもないリアルである事をおしえてきた。
けれど戸惑ったのは最初だけ。
転生した世界「アニマル・ラッキィ」は素晴らしい世界だった。
多種多様、色形、鳴き声様々なもふもふであふれていたからだ。
視界のふもふふ率が異常なくらいだ。
けれど、もふもふ好きだから問題ない。
天国だと思った。
一度天国にいったけれど、こここそが天国だろう。
実在する天国、だった。
それで、そんな転生後の私は、ちょっとした里の重要人物だったらしい。
獣人の少女で、獣使いの里の巫女に生まれていた。
目が覚めたときは、ちょうど付近を見回りしている最中だった。
こう、転生して十年すこらたった体に、前世の記憶が流れ込んできたのだ。
しばらく混乱して立ち尽くしてしまったが、幸いにも身の危険が迫るような所ではなかったため、助かった。
裕福な暮らしに、仲の良い知人がいる第二の人生は満ち足りている。
しかし、
そこの里の住人は、
住民はパートナーとなる獣を必ず一人選ばなければならないらしい。
獣使いは、15歳の成人の儀までに選んだその獣と一緒に暮らしていくらしいのだが、私はまだ決まっていなかった。
里の周りの見回りを終えた私は、里へと帰還。
里の中には、獣の里と言うだけあって、色々な動物達がいる。
目の前に並ぶもふもふ達。
かわいい。
あいらしい。
キュートである。
しかもラブリー。
この中から一匹を選ぶなんて、悩ましいことこのうえない。
「バウッ」「ワンワンッ」「ニャーゴ」「ピイピイ」
鳴き声を上げて存在を主張する動物たちに手を伸ばし。
なでなで。
見慣れた動物である犬や猫などもいいだろう。
しかし元の世界にはいなかった幻想的な生物も捨てがたい。
空を飛ぶユニコーンは毛並みがつやつやでいいし、尻尾が犬みたいに長いウサギなどもいい。
狼っぽいけれど、水玉模様の動物もよさそうだ。
候補がいろいろありすぎるため、10歳になった私は、これといった獣が決められないでいた。
「どうしよう。皆可愛い」
だって、どれも皆可愛すぎる。
この中から特別を選ぶなど、無理な行為だった。
そんな風にしていたら、友人のアリオに声をかけられた。
「お嬢ってば、また悩んでる。そろそろパートナー決めないの?」
ライオンのパートナーがいるアリオはやれやれと首をふる。
呆れた目で見られるけれど、私にとってはとても大切な事だから仕方がない。
「その調子で悩んでたらおばあちゃんになっちゃうかもね」
そんなに長く悩む予定はないが、しかし決められない事は事実。
一体どの動物に候補を絞ればいいだろう。
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