第1話 アニマル・ラッキィ


 というわけで、私は死んだようだった。


 説明のまとめ終了。


 なぜ私が死んだのか、肝心のシーンが描写されていないが。


 そんな私の目の前には、見た目だけは人間のような人がいた。

 

 けれど、どこか神秘的な雰囲気をまとっているので、人間ではないと思われた。


 具体的に何がどう違うのか説明を求められると困るが。


 オーラとか、雰囲気的なものは確かに違っていた。


 そこに存在しているのに、いないと感じさせるような。


 独特な、本能的な何かが訴えかけてくるような存在だ。


 その女神が「貴方は、死にました」と言った。


 真っ白な部屋で、転生を司る神様に言われた私は、「はぁ」と言う。


 そうしか言えなかった。


 美人で秘書風の女神様。


 世の男性ならず、女性ですらため息をつくような美貌の持ち主は、私を見ながら言葉を続けた。


「転生させるんで、どこか希望がある世界に心当たりがあるなら、申告お願いしますね」


 しかし、丁寧に喋ったのは、先ほどの一言だけだった。


 いきなり口調がぞんざいになった。


 えっと、おもわず相手の顔をまじまじとみてしまう。


 普通の人にそれをやるのは失礼だけど、相手はどうみても普通ではないし、状況に分からない事が多すぎた。


 でも相手は、特にふざけているような様子はなくて。


 普通に真面目そうだ。


 その、人間離れしているけど、仕草は普通の人が口を開いた。


「ええと、こちらの書類を確認してみると。候補地となる世界はいくつか存在しているんですがね。聞きます?」


 今までに何度も同じ事務作業を淡々とこなしてきたかのような感じ。


 どこか、慣れのようなものを感じさせる。


 私のような(死んだ)人間の世話を、これまで何度もしてきたのかもしれない。


 転生先について聞いてくるその人?神様?に、私は間髪入れず答えた。

 

「それならもちろん一つしかありません。ぜひ、「アニマル・ラッキィ」の世界でお願いしますっ!」


 ケモナー好きの乙女ゲーマーに有名だった「アニマル・ラッキィ」。

 そこは、もふもふの動物がたくさんいて、ケモ耳ケモしっぽの生えた獣人が住んでいる場所が舞台であった。

 私は乙女ゲームも、もふもふも好きなので、第二の人生を送れる場所が選べるのならそこしかないと思った。


 自分が死んだと言われたら普通ショックで泣き崩れる所だけど、中途半端に目の前の光景から現実感が亡くなっているせいだろう。


 パニックになるような事はなかった。


 目の前の神様っぽい女性が、「では、転生者後一名、ご案内します」と、こちらを見送るように手を振ると、目の前が真っ白になって、意識がぼんやりしてきた。


 そして、次に目を覚ました時は、ケモ耳の国だった。


 そして私は、獣人になってたのだ。

 自分の頭にふさふさの耳がついていて、おしりにもふさふさのしっぽが生えている。


 年齢は元の自分からちょっと下がって、お子様状態だった。

 子供だった。


 こうして私は新たな姿になって、第二の人生をスタート。


 自分の好きな世界で、日常を送る事になったのだった。



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