「……で、ね？　ここからは少し真面目な話をしてもいいかしら。もしかしたら、こんなに重い女だったんだって驚かれたり……本気で引かれちゃうかもしれないけど……最初で最後、一回だけ許してくれる？」

　今日で最後なら。

　貴方が生きて、明日を迎えられないなら。

　私のありのままを全て、伝えておきたい。

「……本当は、怖いの。一年と少し付き合っただけの私が、貴方のご家族に泣いて頭を下げて、傍にいたいって言い続けて。事故の後しばらく、貴方のご家族やうちの親に反対されながらも毎日病院に通っていたの。そうしたら、とうとう貴方のお父様に怒られてしまって……」

『この子なら、君の幸せを一番に考えた筈だ！　気持ちは有り難いが、もうやめなさい！』

「貴方が望んでいないって言われたのは、さすがに堪（こた）えた。そして私の自分勝手誰もが迷惑をしている。そう思ったら、病院に行けなくなったの。あの時はどうしたらいいか分からなくって、部屋で考え込んでは泣いてばかりだった」

　でも。

　でも、ね。

　でも。

「友達もろくに作れない、教室の片隅で本を読む事しかできなかった私に、貴方はたくさんの幸せをくれた」

　人を好きになるという事。

　好きだって言ってもらえる喜び。

「貴方だけが、私に教えてくれた」

　肩を寄せ合って見上げる、夜空の美しさ。

　人ごみの中、はぐれないようにと繋いでくれた手の温もり。

「息苦しくさえなるくらいに……」

　明日を。

　未来を。

　夢を、見させてくれた。

　モノクロームの世界を色鮮やかに変えてくれたそんな貴方を。

　貴方との幸せを。

「諦められる訳がないでしょう……！！」

　そこからはもう、迷わなかった。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい