ひとつ布団の中で

hibari19

第1話

「ねぇ純ちゃん、眠るまで手を繋いでてもらってもいい?」

「いいよ、もしかして美緒ちゃん家でもそうなの?」

「違うよ、家では一人で眠れるもん。でも今日はさ」

「わかった、今日は興奮してるんだね、なんてったって修学旅行だもんね」

「うん、まぁね」

 並べた布団から手を出して、しっかりと握ってくれている。

「ねぇ美緒ちゃん、そっち入ってもいい?」

「ふぇ? そっちって、こっち?」

「うん、手だけ出してると冷たくなるかなって思って」

「い、いいよ」


「あ、ちょっとだけ狭いね。美緒ちゃんこうしよう」

「うっ」

「どうした、苦しい?」

「ううん、大丈夫」

 好きな子に抱きつかれて心が張り裂けそうで苦しいの、とは言えない。

「あれ、なんか熱いよ。熱でもある? 美緒ちゃん風邪ひいた?」

「純ちゃん、違うから」

「ほんとに?」

「あのね、熱いのはね」

「うん」

「純ちゃんのことが好きだからなの」

「好き?」

「うん」

 周りにクラスメイトも寝ているから、元々小声で話していたけど、さらに小さな声で頷いた。

「そっか、病気じゃないんだね。良かった」

 抱きしめられたまま、無邪気な笑顔を向けられた修学旅行の夜。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る