第11話 ブチギレ

リリィは、サーシャに連れられ王都を歩く。

流石に王都。人が多い。

そして、活気に溢れていた。


(うわぁ。やっぱり人が多いな!

俺は、こういう人混みの所は苦手だなぁ。

なんか鬱陶しさを感じるよ。)


「確かに、そうですねぇ。

流れに乗らないと歩き辛いという感じですね。」


リリィと話しているとサーシャが口を挟んできた。


「ふふふっ。それが二つ名の呟きリリィと呼ばれる理由ですね。

私には、全く聞こえないですが、リリィさんは、精霊さんとお話しているんでしょう?」


「そうですわ。

人混みがフミヤ様はお嫌いなようですわ。」


「フミヤ様?……あっ。精霊さんのお名前ですか!

へぇ〜精霊さん人混みが苦手なんだ!

なんか面白い!」


そう言うとサーシャは、コロコロ笑いだした。


なんかこの人、あれだな。

年頃の女性が笑いだしたら止まらないってやつだな。


まあ、明るい活発な女性ということで良しとしよう。


そう言ってる間に、冒険者ギルドについた。


ガーランド王国本部ギルドということで、見た目から凄い。


高級ホテルなのかと思わすようにデカイ。


(なんで、こんなにデカイんだよ!

冒険者が沢山いると言っても、こんなデカさは必要ないだろうに!)


リリィがサーシャに尋ねる。


「とても大きくて立派なギルドですが、持て余していません?」


「ああ!確かに大きいですよね!

でも、実質ギルドとして使ってるのは一階部分だけです!

2階から上は、冒険者が泊まる宿となってます。まあ、ここに泊まれる冒険者は余程お金に不自由しない稼ぎの良い冒険者だけですけどね。

あっ!リリィさんは今日明日と、ここに泊まって頂きますよ!

代金は、ギルド持ちですから!

ご心配なさらずに!

さあ!では、ギルド長の部屋にご案内しますね!さあ!どうぞ!」


本当に、このサーシャって、ポンポンポンとリズミカルに喋るよな。

結構早口だけど、リズムが良いからか、頭に内容が入ってくる。


ギルドに入りると、中の配置は変わらない。


正面に受付、右に依頼が貼ってある掲示板。

左が酒場、食事処。


まあ、規模は違うけどね。

受付だけでも10人以上の受付のお姉さんが居るもんね。


サーシャはリリィを促して、受付の奧へと進んで行く。


廊下を少し歩いて、扉の前で立ち止まる。

ノックをして、サーシャが大きな声で言う。


「リリアン様をお連れしました!」


「ああ!入ってくれ!」


サーシャが、どうぞと言うそぶりでリリィを促す。


リリィは、扉を開く。


「失礼いたします。」


部屋には、恰幅の良い口髭を蓄えた男と猫の獣人の女性がいた。


男が口を開く。


「よく来てくれた!呟きリリィ!

王都前の町の支部ギルドでの活躍を聞いているよ!

さあ、座ってくれ。

私は、ガーランド王国本部ギルド長のザインだ。そして、こっちが副ギルド長のアンだ。

よろしく頼む!」


リリィはソファに腰を下ろす。


アンは、お茶の用意をしている。


「あのぅ。サーシャさんからお聞きしましたが、指名依頼があるとか?」


「おお!そうなんだ!サーシャが言ってくれていたか!

早速、話をしようではないか!」


リリィの向かいにギルド長のザインが座る。

そして、副ギルド長のアンがお茶を淹れてリリィの前とギルド長の前、そしてその横に置きギルド長ザインの隣に座る。


「指名依頼なんだが、王家からの指名依頼だ!

悪魔が、この王都周辺に現れたのは知っているかな?」


「はい存知あげています。」


「その悪魔が王家に対して、王女を嫁に寄越せと言ってきたんだ。

なので、悪魔の元までの王女の護衛が依頼だ。

依頼報酬は、金貨10枚。悪くないだろう?」


金貨一枚が、だいたい日本円で10万。

なので100万か。コイツ舐めてるのか?


(リリィ!まだ受けるなよ!

悪魔の元まで護衛って簡単にコイツ言ってるけど、普通は悪魔に殺されて終わりなんだぞ。

舐めてるとしか言いようがない。)


俺は、副ギルド長アンに向かって憑依を念じる。


獣人だから、体内に魔石があるはず!


体が持っていかれ、アンの魔石に入り込むことができた。


視界が変わってリリィが正面に見える。


うん? " 瞬歩" " 跳躍 "

これが、アンのスキルか。猫の獣人だから俊敏に動けるスキルだな。

スキルゲットだぜ!


そう俺(アン)が思っていると、ギルド長ザインが依頼書を取り出して言う。


「では、ここにサインをするように。」


ここで、俺(アン)は口を開く。


(おい!コラッ!ギルド長!舐めてんのか!

俺は、リリィに付いている精霊!フミヤだ。

魔石ペンダントの中に居たのだが、お前が余りにもふざけた対応をしているからな!

コイツの中に入って、話している!)


俺(アン)は、捲し立てた。


「おお!こっこれは凄い!

これが、リリアン殿の精霊の力!

で、何をそう怒られているのですか?」


(とぼけやがって!

王家からの指名依頼で金貨10枚だと!?

どれだけギルドが中抜きしてるんだ!

王家からの指名依頼なら、白金貨くらい出しているはず!

お前達も手こずっている悪魔相手だぞ!

金貨10枚な筈があるわけないだろうが!

舐めてるとどうなるか、わからせてやろうか!)


俺は、ギルド長ザインに向かって憑依を念じる。


体が持っていかれ、すぐに押し出される。


ギルド長ザインと副ギルド長アンが痙攣している。


「あ〜あ。フミヤ様。ギルド長と副ギルド長を痙攣させてしまいましたわ。

どうするのです?」


(リリィ!絶対、コイツ中抜きを半端なくしてんだよ。

リリィは、足元を見られているんだ。

所詮Eランクの冒険者。金貨10枚でも高額だろう?金貨10枚でも満足するだろうと。

そして、万が一リリィが悪魔に殺されてもEランク冒険者だから、ギルドに損害もない。所詮Eランク冒険者!痛くも痒くもないと思われているんだ。

だからコイツに、わからせて正当な報酬を支払わせて、もっと詳しく依頼内容を説明させる!コイツは舐め過ぎ!

殺意が生まれたわ!)


「ふふふっ。

初見で、ここまでフミヤ様を怒らすとは、この人も愚かな人ですわ。」


(金は、いくらあっても良いからな!)


「あっ。気づきましたわ。」


「………うっ。……なっ何が…。」


俺は、すぐさま副ギルド長アンに向けて憑依を念じる。

悪いな!でも、お前達が悪いんだぞ!


「ギルド長。あまりフミヤ様を怒らさないでくださいませ。

一応注意喚起しときますわ。」


呆然とするギルド長ザイン。


そこに俺(アン)が、ザインの胸倉を掴んで言う。


「おい……わかったか?

俺の力なら、お前なんていつでも息の根止めれるんだ。

リリィに対して舐めたことしていると、お前……わかるよな。

正式な依頼金を出せ。

それから、全て詳しく説明しろ!

二度目はないぞ………

お前も死にたくないだろう?

それに、王家からの依頼を断りたくないだろう?」


ギルド長ザインは、一気に顔を青ざめる。


そして、自分の机の引き出しを必死に開ける。


そして、頭を下げながらリリィに白金貨3枚をさしだす。


白金貨3枚。日本円で三億円か。

まあ、こんなところだな。

こいつ、ほとんど丸取りじゃねえか!

本当舐めたやつ!

まあ、少しは懲りただろう。


(本当に、これ以上ないのだな?

後からわかった時には、覚悟しとけよ!)


「あっありません!こっこれが全てです。

だから、だからお許しを!」


(じゃあ、詳しく丁寧に事の経緯、悪魔の要求から全て聞かせろ。

王家の情報もだ。

王家の内情もわかってんだろ?

全て懇切丁寧に説明しろ。)


「ふふふっ。フミヤ様、もうギルド長が震えて言葉にならなかったら余計に面倒ですわぁ。

脅すのは、その辺で辞めてあげてくださいませ。」


(リリィ!でも腹立つだろ?白金貨3枚を金貨10枚にしようとしてたんだよ!

こういう奴、大嫌いなんだよ。

……でもまあ、そうだな!

じゃあ、もう許してやるから全て話せ!)


「はっはい!

でっではガーランド王国王家の内情から…。

現在の王妃は、実の所、元は側室でした。

元々の正王妃エリシア様が中々子を授かることが出来ず、王は側室を取る事を拒んでいたのですが、侯爵の圧力に負け側室を取り、側室だった王妃が第一王女、第二王女、第一王子を産みました。


数年後、正王妃エリシア様がご懐妊され、第三王女セシル様が誕生しました。

しかし、セシル様を産んだ後お亡くなりになりました。

産後の回復が思わしくないとの話でしたが、王城内の噂では、側室だった現王妃が薬を盛ったのではないかと囁かれています。」


(亡くなったエリシア王妃と第三王女のセシル姫の名前は出てきたが、他の名前はなんで言わないんだ?意味があるのか?)


「そっそれは王都に住まう者、認めていないからです。

現王妃は、所詮、スナイデル侯爵があてがった女。

我々にとって、王妃はエリシア様のみ。

あんなアバズレ!認めない!

第一王女も第二王女も、第一王子も同様!

王の子ではないという話ですから!

スナイデル侯爵の子というのが、王都の者達の見立てです!

ある時、私は王に聞いたのです。

王は苦笑いを浮かべ、私に言った。

" 私が触れた女は、エリシアだけじゃ。"と。」


(なんで、そんなことになっているんだ?

王は自分の子ではないのに、子と認めているのかよ!?)


「それは、王国故の究極の選択だったのです。

世継ぎが必要なのです。

エリシア様がご懐妊になったのは、あの女が第一王女を産んでから四年後のことですから。セシル様が生まれた同年、あの女は第一王子を産みました。世継ぎを産んだ形になったわけです。」


(それは、スナイデル侯爵の子だろうがよ。

なんか、リリィ!この世界は節操のかけらもないのかよ!)


「フミヤ様。ごく一部の者達ですわ。

元に、王はエリシア様を愛し続けていらっしゃいます。

亡き後も、現王妃には指一本触れず。」


「その通りです。リリアン殿の言う通りです。

王は、エリシア様が亡き後、エリシア様が残したセシル様をそれは、それは愛情を込めて育てておられました。

しかし、それを面白く思わないのが、あの女、現王妃です。

セシル様を忌子と言い、虐げていきました。

それを守る為、エリシア様の弟君、ライデル様が元帥として王国に留まり続けています。

セシル様は、目が弱視。

それを良いことに、あの女の子供第一王女と第二王女も加担して虐めているそうです。

あんなに美しいセシル姫を……。」


(ライデル元帥?が居て、なんでそのアバズレ王妃が好き勝手にできるんだ?)


「……もう今や王家の実権を握っているのは、アバズレ王妃……いやっスナイデル侯爵なのです。

貴族は侯爵派と王派に分かれ、その割合は7:3、いや8:2とも言われています。

ライデル元帥が王国に留まっているから、何とか王もやっていますが、ライデル元帥が居なくなると、王から追いやられるのも時間の問題なのです。

以上が王家の内情です。」


「続いて、悪魔の要求の話です。

悪魔が、突然王城に現れ王女を差し出せと言ったそうです。

王は、断りました。

しかし、悪魔は娘と王国の民を天秤にかけて迫ったそうです。

言葉に詰まった王に代わり、アバズレ王妃がセシル様を差し出すと答えたそうです。」


(王は、なんで反論しないんだ!)


「反論はしたのです。

しかし、アバズレ王妃に罵られどうしようもなかったようです。

今の王は、力がないのです。」


静聴していたリリィが口を開く。


「しかし、ライデル元帥がそれをゆるしませんでしょう?」


「それが……運悪く…ライデル元帥が今王国に不在なのです。

エルフの里に帰っている時でして。

なので、王は私を頼りました。

屈強な冒険者をセシル様の護衛として付けて欲しいと。

そして、運良く私はその人材を見つけることができました。

王都前の町、支部ギルドで活躍していた貴方達を。

支部ギルドに連絡を取り、リリアン殿の精霊様が悪魔を操ることが出来るのではと踏んだわけです。

それが、指名依頼の理由です。

王は、それを知って精霊様が悪魔を操っている間にセシル様をエルフの里に逃すおつもりのようです。それが、セシル様が幸せになる手段だと考えられています。」


(………なるほどな。

まあ、元々俺達は、悪魔を狙ってたからな!

依頼を断るつもりはないけどな。

悪魔も確実に操ることが出来るだろうしな。

でも、これ、悪魔をどうのこうのするだけで済む問題か?

王国大丈夫か?俺が心配する必要はないだろうが……お前達国民は、そのアバズレ王妃とスナイデル侯爵が好きなようにやってる、していくことに反発はないのかよ?)


「………許せません!

しかし……力が全てですので。

言い訳になりますが、だからそうなる前に資金を蓄えるつもりで……依頼金を……」


(馬鹿か!言い訳だ!

結局、お前も自分のことだけじゃねえか!

まあ、良い。

リリィ!この指名依頼受けようぜ!

白金貨3枚ゲットだ!)


「わかりましたわ。

ギルド長!ここにサインしたら良いのですね。」


「あっ。そうです!」


リリィはサインをした。


(契約成立だな。で、この後どうするんだ?)


「あっはい!明日、私と副ギルド長アンと共に王城に顔合わせに行ってもらいます。

明日昼過ぎに馬車でいきますので、それまでごゆっくりして貰えれば。

ここに、部屋を用意していますので!

サーシャに案内させます!」


俺とリリィは、明日王城に行くことになったのだった。


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