第9話 宴と悪魔の動向

リリィ達の目の前に広がる光景。


一際大きいオークキングが大きな斧を振り回して、ハイオーク達を切り伏せていく様。


オーク、ゴブリンは正に災害が起きたかのようにオロオロとするだけ。


(" ブヒブヒブヒィ"

" キングがぁ!ご乱心だぁ!)


(" グギャグギャグギャグギャ〜"

" なんで〜俺達ゴブリンまで巻き込まれなきゃ駄目なんだ〜")


ゴブリンが逃げ出そうと駆け出す。


しかし、その先に居るのはギルド長率いる冒険者達。


「ヨシっ!リリアン殿の精霊、フミヤ様が予定通りオークキングを操り、ハイオーク達を屠ってくれている!

俺達は、ゴブリンを仕留めるぞ!

ランクの低い者は、無理をするな!

後方支援でいい!

行くぞ!突撃!」


逃げ惑うゴブリン達に冒険者達が襲いかかる。


統率の取れていない者など、楽勝とばかりに次々に冒険者達がゴブリンの首を落としていく。


奥では、オークキング(フミヤ)がハイオークを狩り終え、次はオーク狩りに移っている。


リリィは、ゴブリンを斬りながらオークキング(フミヤ)の元へと急ぐ。


リリィがオークの隙間を縫うように進んでいた時、オークに気づかれて囲まれてしまった。


リリィにオークの魔の手が迫る。


オークキング(フミヤ)は、それを見逃さなかった。


リリィに手を伸ばそうとしたオークに向かって憑依を念じる。


そして、リリィを囲んでいたオーク達を殴り飛ばす。


この間、約3秒。


オーク(フミヤ)は、オークキングを見る。


地面に倒れていたオークキングが立ちあがろうとしていた。


(マジかぁ。3秒も痙攣しないのか!

こりゃマズイな。

憑依憑依憑依憑依憑依!)


取り敢えずリリィの周りにいるオーク達を憑依しては、乗り換えて行き痙攣させていく。


すると、頭の中で憑依がレベルアップしたことを知る。

うん?憑依がレベル上がって新たなスキルが現れたぞ。


呪殺?呪い殺すってこと?

おいおい物騒だな。

ていうか、憑依ってスキルだったんだな。


おっと!ゆっくりしてられない。

オークキングに戻らないと!


オークキングを見ると今の状況に唖然としている。


ふん!気の毒だが、また憑依だ。

俺は、オークキングに向かって憑依を念じる。


オークキングの魔石の中に収まる。


(リリィ!無茶するなよな。

危なかったぞ!

なんで皆んなと居なかったんだ!)


「私は、フミヤ様の従者!

従者たるもの、フミヤ様の横に立たねばなりませんわ!

フミヤ様がお側に居ないと私は、落ち着きません!」


(そっそうなの?そうなのか。)


そう言いながら、俺(オークキング)は、リリィに襲い掛かろうとしていたオークを屠った。


リリィは完璧に俺に依存してしまったみたい。

美人に依存されるのは悪くはないけど…

そう思いながらリリィに言う。


(リリィ!俺から離れるなよ!

 離れたら守れないからな!)


「はい!フミヤ様!離れませんわ!」


オークキングのスピード、パワーでオーク達を切り捨てていく。

左手には、リリィを抱えながら。


ほぼオーク達を殲滅した時、ギルド長率いる冒険者達と合流した。


ギルド長も冒険者も俺(オークキング)を見て驚愕の表情だ。


俺はリリィを降ろす。


ギルド長がリリィに声を掛ける。


「呟きリリィ!そっそのオークキングは、精霊のフミヤ様が操っているのだな。

今は、味方と見て良いのだな。」


「はい!中身は、フミヤ様ですわ。

攻撃しないでくださいませ!」


「そっそうか。

で、どうするのだ?

後は、オークキングのみとなったが……」


俺(オークキング)は周りを見回す。

ゴブリンが逃げ惑うのを冒険者が追いかけ回しているが、ほぼ討伐し終わったと言えるだろう。


「フミヤ様。どういたしましょうか?

フミヤ様が魔石ペンダントに戻って、オークキングを痙攣させている間に、仕留めましょうか?」


(リリィ、コイツは3秒しか痙攣しないんだ。

一瞬だよ。なかなか仕留めることはできないだろうな。)


ギルド長が俺(オークキング)に声を掛ける。

「おお!私にも声が聞こえるぞ!

フミヤ様!お力添え感謝いたしますぞ!

で、何か策がおありなんでしょうか?」


(ああ。やってみないとわからんが…

一つ策はある。

俺が、内側からコイツを殺す。

成功するかわからないけどな。

一旦離れてくれ。リリィもギルド長と共に。)


「フミヤ様!どういうことですの?

大丈夫なんですか?」


(リリィ。さっき憑依のレベルが上がって新しいスキルが手に入ったんだ。

それなら、なんとかなるかも知れない。

痙攣3秒で仕留めることが出来なかったほうが、リスクは高い。

試してみる価値はあるだろう?)


「……わかりましたわ。

無理はしないでくださいませ。」


リリィとギルド長、冒険者達が距離を取るのを俺(オークキング)は確認し、新たなスキル "呪殺"を念じる。


その瞬間、オークキングの体を支配していたのが嘘のように自由が効かなくなって、前のめりに地響きを響かせながら俺(オークキング)は倒れた。


そして、俺は憑依を念じる。

リリィの魔石ペンダントに向かって。


「フミヤ様!」


リリィが悲壮な声を出す。


(リリィ!大丈夫だよ。魔石ペンダントの中だよ。上手くいったようだ。

ギルド長にオークキングが死んだか確認を頼む!)


「フっフミヤ様!ご無事なんですね!

……」


リリィは、魔石ペンダントを両手で握りしめ涙を流している。


(ごめん。心配掛けたね。

大丈夫だよ。上手くいったよ。ギルド長に調べてもらってよ。)


「あっ。はい。わかりましたわ。

ギルド長、オークキングが死んでいるか調べて下さい。」


ギルド長が、リリィの言葉を受けて用心しながらオークキングに近づく。


そして確認をする。


「……間違いない。死んでいる。

オークキングは、死んでいるぞ!

念の為、魔石を取り出しておく!」


ギルド長は、冒険者達を使ってオークキングを解体しだした。


(無事済んだな。オークキングのスキルも頂いたし、なかなか悪くなかったな。)


「もう!フミヤ様!

あまり無茶はしないでくださいませ!

オークキングのスキルは何だったのですか?」


(剛力というスキルだったよ。あのパワーの源だろうね。)


「剛力ですか。

それは、また凄そうですわ。

なら、早く実体化しなきゃですわね。」


(実体化は、まだだよ。悪魔のスキル頂いて

ある物を手に入れなきゃ。

なんで、そんなに実体化を俺より願ってんだよ。)


「そんなの決まってますわ。

フミヤ様の体温を感じたいからに決まってるじゃないですか!」


なんか、今の言葉エロいな。

そう思いながら、俺は黙ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その日の夜冒険者ギルドで宴が開かれた。

冒険者達は、飲み食いして盛り上がり、リリィも沢山の冒険者達と盛り上がっていた。


その頃、王都では動きがあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ここは、王都、王城の一室。


ガーランド王国の王と王妃そして宰相が深刻な顔で話し合いをしていた。


「悪魔に、かなりの冒険者がやられたと聞いているが、どうなのだ!

宰相!」


「……Bランクの冒険者も死体で発見されました。高位の悪魔のようです。サタン級というギルド見解でございます。」


「ギルドは!ギルドはどうするつもりなのだ!

そっそうじゃ!勇者!勇者パーティがおるではないか!

勇者は!勇者はどうしているのじゃ!」


「……ギルドも勇者には、だいぶ前から打診しているようなのですが……

勇者パーティは、今隣国のルシア帝国に滞在中で……丸無視だそうです。

どうやら勇者が帝国の第二皇女にベタ惚れらしく……」


「あの女好きめが!

勇者の癖に女の尻ばかり追いおって!

ルシア帝国に抗議を入れるんじゃ!

勇者は一国だけのものではなかろう!」


王の声が響き渡った時、部屋の床が輝き、そこから現れた者が居た。


「フフフッ。

貴様が王国の王か。

我は、サタン級悪魔マモン。

フフフッ。冒険者を何人も送り込んで来ておるが、全て返り討ちにしてやったぞ。

あんな者達何人こようが我の障害にはならん。

今貴様を殺してやっても良いのだが、ここは取引といこう!

貴様に断るという選択肢はない。

断れば王国が滅びると思え!」


「とっ取引じゃと……!何がのっ望みなのじゃ!」


「フフフッ。我は、妻が欲しい。

フフフッ。貴様は娘が三人もおるそうではないか!

一人我に差し出せ!それが取引だ。

5日後、我の屋敷に連れてこさせろ。

すれば、王国を滅ぼすのはやめてやろう!

フフフッ。信用できないか?

ならば、契約をしてやろうぞ!

悪魔契約だ。」


マモンは、そう言うと紙を出しそこに血を一滴垂らす。


紙が輝きそして輝きがおさまる。


「ほれ!これで契約成立だ。」


「なっ何を勝手なことを!

取引するとは言っておらんぞ!大事な娘!

王女だぞ!ふざけるな!」


「フフフッ。父親の愛ですか?

馬鹿らしい。貴様は、父親の前に一国の王であろう?

娘一人に固執して、王国の民の命をないがしろにするのか?フフフッ。良いのか?フフフッ。」


マモンがイヤらしい笑みを浮かべながら王に問いかける。


「うぐぐぐぐっ。」


王は、言葉が出なかった。


すると、王の隣で話を聞いていた王妃が口を開く。


「……マモンとやら。

一人、王女を差し出せば王国に手出しはしないのですね。」


「フフフッ。先程そう言ったではないか。

フフフッ。其方の方が話が早そうだ。」


「……わかりました。

5日後、第三王女セシルを差し出しましょう。」


王妃の言葉に王は、言う。

「まっ待つのじゃ!勝手なことを!

何故?!セシルなのじゃ!」


「決まっているではありませんか!

私の子ではないからですわ!

あの憎き女の子供!

それに、あんな視力の弱い役立たず!

悪魔の嫁という役目くらいしてもらわないと!

あの憎き女があの子を産んですぐ死んで、ここまで育ててやった恩くらい返して貰わないと!

貴方は、まだあの女に未練があるのですか!娘は、セシルだけではありませんよ!」


「………っ!…」


王は、唇を噛み締める。


「フフフッ。まあ、そちらで良く話し合え。

しかし5日後だ。

5日後に娘を寄越さないと王国を滅ぼす。

ではな。」


悪魔マモンは、又床に消えていったのだった。


マモンが消えた部屋で、宰相が口を開く。


「王よ。第三王女セシル様でよろしいのですか?!

ライデル元帥が黙っているとは思えませんが。

ライデル元帥はセシル様の叔父上。セシル様の母君の弟でございます。

セシル様を見守る為亡き姉上の変わりに王国に留まっているのですぞ。

セシル様をそのような扱いをしますと……

エルフの里が黙っていませんぞ。」


「………」


王は、黙り込んでしまった。

王妃が言う。


「ライデルは、昨日エルフの里に行ったのでしょう?5日後ならまだ戻っていないでしょう。なら、大丈夫です。

セシルを出した後なら、なんとでも言えます。

悪魔がセシルを名指ししたとでも言えば良いのです!

ライデルのことです。

直ぐに悪魔からセシルを取り戻そうとするでしょう。ライデルが死ねば、エルフの里との争いもありません!

何かにつれ煩かったライデルも排除できて好都合です!」


「そっそうでございますか。……。」


王が言葉を絞り出す。王妃に向けて。


「せっセシルには、ワシから……

ワシから話しをする。

お前は、黙っていてくれ。頼む。」


「ふん!貴方は、やっぱりあの女に未練タラタラですわね!」


「…………すっすまぬ。」


王は、項垂れるのだった。


ーーーーー第一章 完ーーーーーー

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