星光街アキラ画報 vol.3

第3回 編集会議 20X1/10/07




 修学社僕の学校の文化祭まで あと1週間。

 とはいえ 僕の所属する囲碁・将棋部の展示は 過去の有名対局分析のポスター発表と碁会所・棋会所の設置だけ。ポスター発表は高校生の先輩中心でやってるから 中1の僕には 何の仕事も回って来ない。クラスの方も 合唱コンクールの出場があるだけで 展示とか模擬店とかしないから こちらもヒマ。

 他の文化系クラブの友達は けっこう忙しそうだし 運動部の連中も模擬店の準備とか してるみたいだけど 僕はヒマで 晶の手伝いくらいしかすることが無い。

 


 ところが その晶の様子が おかしい。

 ……いや。おかしいのは いつもだけど。


 先週くらいから なんか機嫌が悪い。

 今も 例によって 僕の学習机のところに座って 不機嫌そうに 指の爪で机をトントンと叩いている。

 触覚みたいに伸びたツインテールの揺れ方まで 不機嫌そう……。

 そろそろ第3号の取材先とか話す時期じゃないの?とは思って覚悟してるんだけど言っては来ない。一応 文化祭準備があんまなくてヒマだってことは 伝えてあるんだけどな。ワザワザ 僕から第3号どうするの?って聞くのも新聞作りたがってるみたいで嫌だし。

 昨日も今日も 僕の部屋に上がり込んで来てるんだけど 新聞の話はしない。自分ところ聖心館の文化祭の話とかひとしきりした後 ウチ修学社の文化祭のこと しつこく聞いてくる。



「どうせ来るんだろ? そんなに気になるんなら 自分で調べたら?」



 って言ったとたん 怒り出した。



「来るんでだろ?って こー汰 チケットも なんにもくれないじゃんッ。そりゃ 日付は教えてもらったけど。その後 ほったらかしにして バカにしてんの!?」



 えっ?チケット?そんなの文化祭にいるの?



「あ あのさ ウチの文化祭 チケットとか無いよ? 入場無料だし……」


「……えっ?そーなの?学校に誰が来るとか申請して チケットもらうんじゃないの?」


「いや 違うと思うよ……」



 聖心館は そんなシステムなのか。流石 女子校。修学社は そんな雰囲気 全然 無いな。入り口に守衛さんがいたりとかもないし。

 


「じゃ じゃあ 私が来ると思ってたワケ?」


「うん。日曜日 母さん休み取れたって 言ってたから その日に 母さんと若菜さんと一緒に来るもんだと……」

 

「なっ なによっ こー汰の説明が悪いから 行けないのかと 心配してたのよっ!このバカッ」



 なんか メッチャ怒って 部屋を出て行った。

 なんで 怒る?まー いつも通りだし いいけれど。

 行きたいって言い出せなくて 悶々としてたのかな?

 晶でも 言いたいこと言えない時ってあるんだな……。



 30分ほどしたら 戻ってきた。

 口は尖らせてるけど 機嫌は悪くなさそう。

 黒のツインテールが ぴょんぴょこ跳ねてる。

 


「次のアキラ画報なんだけど 広河原にするからっ。こー汰 土曜日 合唱終わった後 ヒマなんでしょ? 広河原 案内しなさいね」


「えっ?でも 合唱 終わった後は 母さん達に学校の案内しないといけないし……」


「ハァ? こー汰 アンタ 人の話 聞いてる? 私が言ってるのは の話。ママ達が来るのは 日曜日でしょ?土曜の午後 広河原案内しなさいって言ってんのっ。わかった?」


「……あ うん。えっ でもさ。あきちゃん ウチの学校も気になるんでしょ? 案内しなくて いいの?」



 僕の返しに 晶の細い眉が 八の字になり 蔑むような目つき。

 


「こー汰 自分が 今 何 言ったかも 忘れちゃうワケ? 日曜日にママ達 案内するって 今さっき 自分で言ってたでしょーが。男なら 自分の発言に責任持ちなさいね」


「覚えてるよっ。日曜日は母さんと若菜さん……」



 そこまで 言って ふと気づく。

 


「……もしかして 日曜日も来る気なの?」


「当たり前でしょ。チケットもいらないし 無料なんだから」

  

 

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