俳句12:ポケット○□□の手袋柄違い

 俳句を考えていると、助詞や代名詞の使い方で、大きく印象が変わると感じた俳句です。


【俳句のベース】

ポケット○□□の手袋柄違い


※○は助詞、□□は代名詞



【ケース①】

ポケットへ

彼の手袋

柄違い


 彼女と彼の冷えきった関係。浮気を疑う彼女が、彼のポケットへと忍ばせた手袋の片方は女物! 季語の手袋の温もりは、もう過去のもの。それよりも、冷めきった冬を感じさせる句。



【ケース②】

ポケットの

父の手袋

柄違い


 柄違いでも使えれば問題なく、細かいことは気にしない父。もしかすると、亡き父の形見を捨てるに捨てられず持っている。でも父のようには使えず、ポケットの中に入ったまま。温もりのある手袋の季語が生きた句。



【ケース③】

ポケットに

吾子の手袋

柄違い


 びしょ濡れになった子供の手袋は、親のポケットの中。手袋を買っても必ずどこかで、片方を落としてしまう。それでも、残された手袋は捨てはしない。また、片方だけの手袋が量産されるのだから。そして、左右バラバラの手袋が誕生する。親の叡知の句。



【ケース④】

ポケットも

君の手袋

柄違い


 彼女の手は彼氏のポケットの中に。彼女がポケットに手を入れてきたのか、それとも彼が入れさせたのか。

 初詣で横殴りの吹雪。私は必死に傘を差し、彼女が飛ばされないように私のポケットに手を入れてしがみつく。そんな思い出は遠い過去のもの。




 個人的には、彼と彼女の怪しげな関係のケース①が好きですが、季語が手袋なのだから、やはり温もりの感じられる句がよいのでしょうか。


【今回の句】

ポケットの

父の手袋

柄違い

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