「ぁあ……疲れたぁ」


 まずは平常運転と言わんばかりに一回徹夜を挟み、何だかんだで雑事を振られたせいで二徹目まで突入した今日この頃

 それでもなんとか、りとあらゆる仕事を終わらせた僕はそれでも何故かあまり寝る気になれずに一人、自分の部屋で椅子に腰かけて酒を胃の中に流し込んでいた。


「夜が怖い」


 ずっと働いていたい。

 ずっと、何をしていたい……でないと、世界から置いて行かれるような気がして。


「あぁぁぁ、あぁぁぁぁ」


 何でこんなことになったのだろうか。

 そんなことを考える僕はまるで、現実逃避でもするかのようにワインを瓶ごと直接口につけて胃の中へと流し込んでいく。

 酒に溺れながら仕事をする。凄まじいダメ人間ではないか。


「別に、僕は無能じゃないんだけどね」


 比べる相手が、悪いだけであって別に僕とて無能ではないだろう……だが、どこまで行っても餓鬼の頃に目指していた英雄からは果てしなく遠い。

 そして、仲間であるルーエたち三人にも。


「んっ、はぁー」

 

 手に持っていたワインをすべて飲み尽くした僕は酒瓶を適当に投げ捨てる。


「はぁ」


 そして、酒瓶が割れる音を聞きながらベッドの方に寝っ転がる。

 好待遇である星霜の風の一員である僕に割り振られた高級なベッドは確実に自分の体を受け止めてくれる。


「寝たくない」


 睡眠は嫌いだ。

 休息は嫌いだ。

 もう、何年も休日と言えるような休日はとっていない……本当は、睡眠時間もなくしたいところなのだが、魔法であってもそれは無理。

 どれだけ嫌でも、眠る他ない。


「はぁー」


 既に、僕の身体も限界と言えるのだから。


「……せめて、何も見ないと良いんだけど」


 どれだけ良い枕を使っても、どれだけ良いマットレスを使っても、どんな環境であるとも安眠出来た試しがない。


「……いつ、終わるのかなぁ」


 僕は酒に酔い、まともに働いていない頭の中でくだらないことを妄想しながら瞳を瞑り、意識を徐々に闇へと落としていく。

 自分を唸らす悪夢を見て頭をほんのわずかにすっきりさせるために。



 あぁ、どうか……明日は、今日よりもいい日になりますように。


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