食事

 ローストビーフ丼。 

 このお米は遥か遠くの地より取り寄せたものであり、当然この国の人間が食べたことのないものである。

 そして、ローストビーフだって知らなければ卵を生で食べるなどという発想もこの世界の人間にはいない。


「ざ、斬新な料理ね……」


 ゆえに、今回僕が作った料理はこの場にいる僕以外の全員にとって新感覚の料理となるだろう……果たして、口にはあってくれるのだろうか。


「それでも、コーレンが作る料理ですからぁ、美味しいものよぉ?」


「まったくだね、コーレンが作ったというだけで大いに信頼をもてる」


「そうだね。ふふふ……今日もコーレンの料理」


「まぁ、確かにコーレンは料理上手で有名だものね」


「まぁ、早く食べようか。いただきます」


「「「「いただきます」」」」

 

 僕が星霜の風の中で流行らせ、ウルティも釣られてやるようになった食前の挨拶を共に同じダイニングテーブルを囲んで座った状態で手を合わせて行うと、僕たちは食事をとり始める。

 

「んー、何か食べたことのない感触だけどぉ、美味しいわねぇ」

 

「ふっ、非常に美味だ。今日も素晴らしい」


「……ふへへ、コーレンが素手で触れた食物が私の身体の中にぃ」


「あっ、ほんとだ。すっごく美味しい:」


 自分の作ったローストビーフ丼へと手をつけた四人は次々と感想を口にする。

 そのどれもが好意的なものであり、そこに嘘はないと手に取るようにわかる。


「いやぁ……良かった」


 僕は自分が作った料理を美味しそうに食べている四人を見て頬を緩ませる。

 良かった、良かった……四人の口にもちゃんとあってくれたようだ。美味しそうに食べてもらえて、感無量である。

 料理趣味の半分くらいの楽しみはみんなが美味しそうに食べるのを見ることだからね、今なら料理人の気持ちもわかる気がするよ。


「……うん、美味しい」


 四人の反応を見てからも僕もパクリ。

 しっかりとソースは玉ねぎの旨味が出ているし、お肉も非常に柔らかくて美味しい。お米と黄身もバッチリだ……彩のために入れた葉っぱはどうするか。


「この黄色いの美味しいわねぇ、何かしらぁ?これ」


「卵であろうか?」


「それはないでしょ、明らかに生よ?これ」


「そうね。腹下しの食べ物をコーレンがいれるわけないじゃない。誰よりも食中毒を機にするあの子が」


「ん?それは普通に生の卵だよ。黄身の部分だけの」


「「「「えっ……???」」」」


 ローストビーフ丼の頂上に輝いている黄色、その正体を聞いた四人は驚愕の表情で固まるのだった。

 

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